尹氏の支持率の低迷は
致命傷になりかねない

 これまで尹氏の強みは高い支持率にあった。尹氏の支持率は6月29日に出馬表明した時点では32.3%で、「共に民主党」の李知事の22.8%を10ポイント近い差でリードしていた。また、李元首相は10%強の支持でしかなかった。

 非与党系で常に先頭を走ってきたのが尹氏である。しかし、尹氏は6月末に記者会見を開いて政治活動を始めると宣言して以降支持率の低迷が続いている。それは先述の通り、尹氏およびその家族を巡るスキャンダルと尹氏自身の政治経験の不足が国民の失望を招いた結果であろう。支持率低迷が続けば、さらなる「尹氏離れ」が進みかねない。

 尹氏に対しては、文政権が新設した捜査機関の高位公職者犯罪捜査処(公捜処)が、職権乱用容疑で捜査に着手した。

 尹氏の義母が7月2日、ソウル近郊の議政府(ウィジョンブ)で資格外の療養病院の運営を行い、多額の給付金を不正に受け取ったのは医療法などに違反するとして3年の実刑判決を受けた。尹氏の妻にも株価操作の疑惑や、ホステス出身だったとの疑惑などが浮上した。こうした尹氏のイメージを悪くする攻撃が進歩系から続いている。

 尹氏の政治経験の欠如も明らかになってきている。

 出馬表明の記者会見で尹氏は、文政権を激しく攻撃したものの、自らの政策ビジョンは明確ではなく、記者会見での態度も落ち着かない様子だったという。

 また、会見後に政治活動を始めてからは失言が目立っている。経済紙のインタビューでは労働時間規制を週52時間に制限した文政権を批判しながら「週に120時間でもがむしゃらに働いて、後でまとめて休めるようにすべきだ」と発言した。労働時間規制に対する経済界の不満を意識したものであろうが、長時間労働による過労死が社会問題となっているだけに、現実を無視した暴言だと激しい批判を浴びた。これも政治感覚が乏しいための失言だろう。

 尹氏の広報戦略が稚拙だとも批判されている。尹氏の報道官は6月19日、健康上の理由で就任6日目に突然辞任した。報道官の辞任は尹氏の国民の力入党を巡る混乱が原因だともいわれている。

尹氏が不安視される中で
第4の候補者が浮上

 文政権にとって、尹氏は検事総長として対立した天敵である。尹氏が大統領となれば、文政権の幹部の退任後は安全とはいえないだろう。何としても尹氏が大統領に当選するのは避けたいところである。

 7月28日、MBCと聯合ニュースTVの共同主催によるテレビ討論会では、尹氏に対する与党大統領候補のけん制が集中した。