李知事は尹氏に対し、「正当性がない」と主張した。

 李元首相も尹氏の「経験不足」を指摘した。「検事は過去に対し有罪・無罪を判断する仕事だが、国政は未来を準備し、対立を調整するのが本質であり、そういうことは私の方がよく知っている」と述べた

 今回の大統領選挙は野党系にとって難しい戦いである。文政権はこれまでネロナンブル(私がやればロマンス、他人がやれば不倫)というダブルスタンダードを徹底的に実践してきた政権である。

 進歩系の人々は文大統領に反する候補者およびその親族のスキャンダルの告発に余念がなく、文政権はそれを積極的に取り上げてきた。次期大統領選挙で公平な選挙が行われるとは考えない方がいいだろう。

 既に、尹氏については義母や妻ばかりでなく尹氏自身の職権乱用での捜査も行われている。こうした中、尹氏で本当に大丈夫かとの声は保守系の人々の間で絶えない。

 それを受け浮上しているのが崔在亨(チェ・ジェヒョン)前監査院長である。崔院長は2018年に廃炉が決まった月城原発の監査で廃止決定プロセスが不当だと指摘し、脱原発を指向する文政権と対立した人物。尹氏に先立つ7月15日に国民の力に入党した。上記調査では支持が6%と急増しており、代替候補として注目されるようになった。

国民の力への入党で
尹氏は弱点を埋められるか

 尹氏にとって最大の課題は、国民の声に寄り添った選挙活動を行うことである。これまで尹氏には強靭(きょうじん)な政策集団や選挙マシーンはなく、素人のような政治活動もしてきた。しかし、今後は「国民の力」をバックとした選挙活動ができるようになるだろう。

 尹氏は「国民の力」入党の翌日、同党の元非常対策委員長である金鐘仁(キム・ジョンイン)氏と面談した。尹氏はキングメーカーといわれる金元委員長の助言を求めたものと思われる。尹氏の報道官は「(金元委員長が)政権交代のために良いアドバイスをしてくださったと聞いている」と述べた。

 特に重要なのは「国民の力」の李俊錫代表との連携である。韓国の国民の3割は進歩系、3割は保守系、4割は中道だといわれる。大統領選挙では誰が中道の4割を獲得することで決まる。前回の選挙で文在寅氏が勝利したのも、朴槿恵氏弾劾による保守の没落という背景で行われた選挙だったからである。

 今回は中道の4割に加え、既成の政治に反旗を翻した20代を中心とする若者の支持を誰が獲得するかである。李代表はそこで重要な役割を果たすことになるだろう。