女性の活躍や外国人人材の登用など、日本企業では昨今、さまざまな取り組みがなされている。しかし、それらはステークホールダー資本主義時代に向けてアップデートされているだろうか。企業の責任は、経済的価値のみならず社会的価値の創出へと拡大しているのだ。連載『ザ・グレートリセット!デロイト流「新」経営術』の#5は、経済的価値を重視したダイバーシティ&インクルージョン(D&I)から、社会の公器としての“DEJI”(Diversity, Equity, Justice and Inclusion)への進化が求められている現状を解説する。(デロイト トーマツ グループ パートナー 櫻井 希、マネジャー 大熊朋子)
必須アジェンダとなったD&I
企業は経営基盤として構築できるか
近年、ダイバーシティ経営という言葉がよく聞かれる。「多様な人材を生かし、その能力を最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」のことである。
今、企業成長の手段としてのダイバーシティ経営だけでなく、それそのものが経営基盤として評価されるESG(環境・社会・ガバナンス)経営へのシフトが起きている。
企業はこの潮流を読み解き、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進のみを目的とするのではなく、社会全体に対して持続的に価値を提供するための不可欠な基盤へと高めていく必要がある。そうでなければ資本市場からも労働市場からもそっぽを向かれてしまう。つまりD&Iは、企業が備えるべきリテラシーなのだ。
さて、ここであなたに問いたい。あなたの会社や経営者、直属の上司は、D&Iを体現できているか?多様性を受け入れている組織や上司とは具体的にどのような姿か?