情報鎖国ニッポンPhoto:NurPhoto/gettyimages

近年の脱石炭火力発電、脱プラスチック製品等に代表されるように、日本企業視点から見ると「突然」の環境変化の対応に追われるケースが見られる。「ここまでサステナビリティーの圧力が強くなるとは思いもしなかった」と戸惑う経営者も多いだろう。しかしその背後にある現象をつぶさに見ると、こうした事例は「突然」ではなく「必然」だったことがわかる。連載『ザ・グレートリセット!デロイト流「新」経営術』の#3は、その背景を読み解く。(デロイト トーマツ グループ モニターデロイト 藤井 剛、加藤 彰)

「突然」ではなく「必然」として
サステナビリティー・アジェンダが降りかかる

「突然」海外NGOから批判され、「突然」不買運動に巻き込まれ、「突然」投資撤退を突き付けられ、「突然」資本市場から新たな報告の必要性を指摘され、「突然」政府もかじを切る。その結果、やむを得ず「突然」商品やサービスを見直すことを迫られる――。

 脱化石燃料や脱プラといった問題の背後には、必ず社会課題をアジェンダとして仕掛けるNGOの存在があり、アジェンダのグローバル展開を後押しする国際機関やESG投資家の存在があり、この潮流をいち早く捉えて事業戦略として仕掛ける欧米企業が存在する。

 気候危機の潮流を例にとると、パリ協定以降、OECD、世界銀行、RE100、CDP、TCFD等多くの団体が連携しながら、「気候科学」の要請に基づき、グローバル経済におけるエネルギー基盤の抜本的変革を目指す潮流が出来上がっている。

 その潮流には、ユニリーバやウォルマートのようなサステナビリティー先進企業のみならず、GAFAMなど新興企業も積極的に参画している。2020年にマイクロソフトが「カーボン・ネガティブ」という業界を驚かせる達成水準を掲げたことも、この潮流を捉えた大きな「仕掛け」なのだ。

 なぜ、このように環境変化が「突然」生じたように見えてしまうのだろうか。一部の欧米企業のように、刻一刻と変化するこのような潮流を先んじて察知し、先行して対応することで脅威を機会に転換することに出遅れてしまったのはなぜだろうか。さらに言えば、そもそもなぜ日本は今、サステナビリティーに関する「情報鎖国」状態に陥っているのだろうか。