コロナ療養中の医療費、賃金、死亡時の遺族補償も
カバーされる労災保険は健康保険の傷病手当金よりお得

 労災保険の主な給付内容は、(A)療養補償給付…療養に必要な医療費を現物給付、(B)休業補償給付…療養のために働けない期間の賃金補償、(C)遺族補償給付…業務が原因で死亡した場合の遺族補償だ。

 この中で、療養期間中の生活を支えるのが(B)の休業補償給付だ。1日あたりの支給額は、給付基礎日額(発症日直前3カ月分の賃金を暦日数で割った金額)の8割。支給が開始されるのは、休業4日目からで、3日目までは労災からの支給はない。だが、その間は、事業主が1日につき平均賃金の60%の休業補償を行うことになっている。

 健康保険の傷病手当金は、1日あたりの支給額が平均的な日給の3分の2なので、労災が適用されたほうが有利だ。

 たとえば、給与の平均が20万円だった場合、傷病手当金だと日額4400円程度だが、休業補償給付なら日額6500円程度。休業期間中の生活費を多く確保できるようになるので、業務が理由でCOVID-19に罹患した場合は、労災保険の申請をしよう。

 労災保険は、すべて労働者に適用される。正社員のほか、パートやアルバイトなどの非正規雇用の労働者、日雇いなど、雇用形態に関係なく、労働者なら誰でも対象になるので、たとえ不法滞在している外国人労働者でも、業務中の病気やケガには労災保険が適用されることになっている。

 1人でも労働者を雇用すれば、事業所(事業を行う施設で、私的な企業だけではなく、自治体や公益財団などの事業も含まれる)には、労災保険に加入することが義務づけられている。

 事業主が、労災保険に「加入していない」ということは許されないことで、もしも加入手続きを怠っていたり、保険料を滞納していたりしたとしても、労働者が労働災害にあった場合はきちんと補償を受けられる。事業主から「労災に入ってないから、健康保険を使ってほしい」「アルバイトだから労災は使えない」などと言われた場合は、最寄りの労働基準監督署に相談しよう。

 7月30日、感染の急拡大を受けて、国は、東京、沖縄に加えて、埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県にも新た緊急事態宣言を発令。また、北海道、石川、京都、兵庫、福岡の5道府県は、まん延防止等重点措置が適用された。期間は8月2~31日までのほぼ1カ月で、昨年に引き続き、我慢の夏となりそうだ。

 長引く自粛生活にストレスを感じている人も多いはずだが、冒頭でも述べた通り、感染症は人と人との接触によって、広がっていく。感染を広げないためには、陽性反応が出た人はもちろんのこと、風邪症状のある人も、人と接触しないことを心掛ける必要がある。

 たとえ症状が軽くても、無理をして仕事に行くと、さらに感染を広げることになり、他人の命を危険にさらすことにもなりかねない。COVID-19で仕事を休んだ場合は、健康保険の傷病手当金や労災保険の休業補償給付などがもらえるので、国の保障を利用して、その間の生活を支えるようにしたい。