マッキンゼーでは部下が数十名、場合によってはクライアントチームメンバーが数百名いたのに対し、ブレークスルーパートナーズではほとんど全て自分でやらなければならなかったためで、何事も「必要は発明の母」だ。

 結果として現在では、複数の大企業の経営改革を進めつつ、10社を超えるベンチャーの経営支援を行ないながら、ブログも週2本書き、年間50回を超える講演・ワークショップをこなせている。にもかかわらず、会議中以外はほとんどのメールに着信から5分ほどで返信しているので、しばしば驚かれる。

 本書ではこうした仕事量とスピードを可能にする工夫をできる限り公開する。スピードアップの基本的な考え方から具体的な方法論まで詳細に説明するので、誰にでも試していただける。工夫の1つひとつを見ると、すでにご存知のものも、やるまでもないと思うものもあるかもしれない。しかし、その集積が大きな力を持つし、人によっては1つのノウハウを実践するだけで、劇的に仕事が速くなることもあるはずだ。

 しかも、やってうまくいかないところは、私あてにメールをいただければすぐにお答えし、一人ひとりに手応えを感じていただけるようにしたい。

 もし『ゼロ秒思考』をまだ読んでいただいていない場合は、ぜひそちらも読んでいただきたい。本書の第3章にも書いたように、頭の回転をある程度よくしていただくことが、さらなるスピードアップの大前提になるからだ。

 メモを毎日10ページ書きながら、本書で説明するあらゆるスピードアップのアクションに取り組んでいただければ、鬼に金棒だ。

「速さ」と「早さ」、
そして本書のタイトルについて

 注意書き的なことだが、最初に、仕事のスピードを考えるうえで欠かせない、「速さ」と「早さ」という2つの言葉の定義について、少し整理しておきたい。「速さ」は仕事をするスピードのことを言う。英語で言うと「fast」のイメージだ。どのくらいのスピードで課題把握をし、解決をして成果を出していくかという、時間当たりの生産性だ。速ければ速いほど、書類をつくる時間、会議の時間、何かを成し遂げる時間が短くてすみ、成果を出せる。

 そうすれば、他にやりたいこと、もっとやるべきことにも取り組むことができ、好循環が加速する。そのため、私は「速さ」を大変に重視してきた。

 仕事を少しでも速くできるように、メールの書き方、メールのやり取りのしかた、書類のつくり方、再利用のしかた、会議のしかたなど、無数の工夫を積み重ねてきた。コマツのエンジニアをしていたときの仕事のスピードを1とすると、マッキンゼーに入って3~5倍以上速く、本書でご紹介する方法が身についてからは、体感でさらに速くなっている。仕事時間はコマツのときから常にほぼ変わらず、仕事の質と量が向上し続けている。「早さ」は、朝早く、早起き、など時刻が早いことを言う。英語で言うと「early」のほうだ。スピードが同じでも、早く始めると、ほとんどの場合、前倒しになり段取りがよくなって余計な時間を取られなくなる。

 なので、スピードを上げるのと並行して、私はできる限り「早さ」にもこだわっている。それによって先手が打て、下準備ができ、無駄な時間が減って好循環に入りやすくなるからだ。

 第2章で解説するように、「好循環」という言葉は重要なキーワードだ。仕事にしてもプライベートにしても、「どうやって好循環を起こせるか」「どうすれば好循環がさらに加速するか」に関して常に強い関心を持ち、考え続けている。「好循環」は決して偶然になるものではなく、意識して持ち込めるものと考えている。「たまたま好循環になってくれてラッキー!」というような考え方はいっさいしない。努力し、意識して早めに手を打っていけば、かなりの確率で好循環モードに入り込める。

 私としては、以上のように「いかに速やかに仕事を進めるか」「いかに早く仕事に着手し早く終わらせるか」の両方を常に意識して進めているが、本書では「速さ」に両者を代表させ、タイトルを『速さは全てを解決する』とした。また本文中でも、「早さ」の意味もこめて、「速さ」や「スピード」という言葉をしばしば使っているところがある。ご了承いただきたい。

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