加えて、4月以降落ち込んでいた支持率に一時回復基調が見えたものの、再び下落に転じている。

 文大統領は残りの任期をどのように過ごすことになるのか。文大統領の属する与党内には、文大統領系の有力な与党候補はなく、退任後の安泰を確保するためには支持率を高い水準で維持し、影響力を残したいところであろうが、そのために何ができるのか、苦悩は続く。

演説の大部分は
自画自賛に終始

 今回の演説は合計24分であったが、そのうち、日韓関係は約1分、南北関係は3分に過ぎなかった。

 前半部分の主要テーマは、韓国経済が世界のトップ10の経済大国になったことを自慢するものであった。また、軍事面では総合軍事力で6位となる軍事大国になったこと、文化芸術面でもBTSの音楽や映画「パラサイト半地下の家族」で世界的な賞を獲得したことを挙げるとともに、クラシック音楽やバレエのような伝統芸術分野でも卓越した成果を上げたことを誇らしく語っている。

 さらに、先達から受け継がれた「共生と協力の力」によって「日本人に対する復讐の代わりに包容を選択」(文大統領発言のママ)した、ワクチン接種も目標値に近づいている等述べたが、説得力はない。

 韓国版ニューディールは、「人」が中心となる「革新的包容国家」に向かうロードマップであり、国家発展の戦略である、政府は経済に革新と共生、包容の価値を取り入れ、より一層強い経済を築いていく所存だと述べたが、経済政策の失敗により韓国経済が苦境に陥っていることへの反省も打開の方策もない。

 国民が求めていることは、生活の向上であり、その展望が見いだせない演説であり、各紙の扱いは小さかった。