昨年の演説では板門店宣言に言及し、「南北が共同調査と着工式まで進めた鉄道連結は未来の南北協力を大陸に拡張する核心動力。南北がすでに合意した事項を一つ一つ点検して実践する」と述べていた。

 文大統領にとって最後となる今回の光復節演説で北朝鮮への具体的提案を含めなかったのは、最近の南北通信線を巡るやりとり、米韓合同軍事演習の規模縮小で悪化した国内世論や北朝鮮の演習への反発で動きが取れなくなっていたということであろう。

 文大統領としては、南北首脳会談を再度行うことが目標ではないかと考えているが、その展望は見えない。

光復節演説は
対日強硬姿勢が特徴

 2017年に行った文大統領の最初の演説は、大統領の民族、国家、歴史観や対日認識を色濃く反映していた。

 文大統領は、

「1919年の3・1運動の理念は、上海臨時政府の樹立を経て、大韓民国建国の理念となった。これはキャンドルを持った国民の実践となった」
「光復70年が過ぎても日本植民時期の強制動員の苦痛が続いている。南北関係が改善されれば、南北共同の被害実態調査を検討する」
「歴史問題にふたをしてやり過ごすことはできない」
「日本軍慰安婦や強制徴用など韓日間の解決に関しては人類の普遍的価値と国民的合意に基づく被害者の名誉回復と補償、真相究明と再発防止の約束という国際社会の原則がある。韓国政府はこの原則を必ず守る。日本の指導者らの勇気ある姿勢が必要」

 と述べた。

 この発言の真意は、歴史問題を振り出しに戻して改善を迫っていくというものであり、日韓関係悪化の端緒となった演説である。