これは、その後の演説も引き継がれ、日韓関係が日本の戦略物資の輸出審査厳格化で緊張した2019年には、「日本の不当な輸出規制に立ち向かい、責任ある経済協国への道を地道に進んでいく」と述べ、反日だけではなく「克日(日本を克服する)」を強調し、経済はもとより安全保障でも「外勢に揺るがされない国」を新たな目標に掲げた。

 昨年は、歴史認識などでは日本への直接的な批判は見られず対日批判は比較的抑制されたものになったが、徴用工については「個人の賠償請求権は消滅していないとの判断。韓国政府は司法の判断を尊重する」と述べ、妥協をしない立場を強調していた。

北朝鮮に対しては
具体的提案に注目

 2017年の演説で文大統領は、

「朝鮮半島の問題は韓国主導で解決する」「朝鮮半島における軍事行動は大韓民国だけが決定でき、誰も大韓民国の同意なしに軍事行動を決定できない」
「北朝鮮の核問題の歴史は制裁と対話が一緒に進むとき、問題解決の端緒が示された」
「核凍結から始めるべき」
「私は前から『朝鮮半島の新経済地図』構想を明らかにしている。南北間の経済協力と東北アジアの経済協力は南北共同の繁栄をもたらし、軍事的対立を緩和する」
「平昌(ピョンチャン)オリンピックを平和の五輪にしなければならない」「南北対話の機会とし、朝鮮半島の枠組みを作らなければならない」

 と述べた。

 この発言は、平昌オリンピックとそれ以降の南北、米朝対話を予言するものとなった。