雇用情勢が厳冬を迎えていた時期に就職活動をした「就職氷河期世代」が50歳に到達した。氷河期世代には、非正規など不安定な仕事に就いていたり、無業の状態にあったりと、今もなお不遇が続いている者が少なくない。特集『新・階級社会 上級国民と中流貧民』の#4では、将来的に、生活保護に依存せざるを得ない氷河期世代の「社会的コスト」を独自に試算した。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
就職氷河期世代を放置すれば
社会保障費の負担増は不可避
政府が「就職氷河期世代支援プログラム」を大々的に打ち出し、3年間の集中プログラムで氷河期世代の正規雇用者を30万人も増やすとぶち上げたのは、2019年のことだ。
その後、官公庁や自治体などで氷河期世代を対象とした中途採用が数多く実施された。20年に厚生労働省が行った採用では、10人の採用予定に対して1934人が応募、倍率は約190倍という殺到ぶりを見せた。
「就職氷河期世代支援プログラム」では、あくまでも、不本意ながら不安定な仕事に就いている者に対して、「希望に応じて意欲・能力をいかして活躍できる環境整備を進める」という、個人への救済の側面が強調されている。
だがその裏側には、国が将来の社会保障費負担の増加を回避したいとの思惑があることは明らかだ。非正規雇用や無業など、氷河期世代の不安定な就労状況や低賃金状態を野放しにすれば、老後に生活が困窮し、生活保護に頼らざるを得なくなるリスクは高まる。
実際に、氷河期世代の不安定な働き方が、将来の社会保障費にもたらすインパクトはどのくらいになるのか。
ダイヤモンド編集部が独自に試算したところ、衝撃的な結果が導き出された。就職氷河期でも雇用情勢が特に悪化していたのは2000年前後。約20年もの長きにわたって、抜本的かつ継続的な氷河期対策を講じてこなかった付けが「社会的コスト」という形で膨れ上がってしまったのだ。
それでは、独自試算の詳細を見ていこう。