東証1部からプライム市場に移行するための条件として、「流通株式時価総額100億円」という基準が設定された。業種ごとの流通株式時価総額ランキングを作成すると、新興勢も多い情報・通信業では、41社がプライム落ちの危機に直面していた。特集『東証再編 664社に迫る大淘汰』(全25回)の#6では、その顔触れを紹介する。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
女性向け恋愛アプリのパイオニアも苦戦
情報・通信業で流通株式時価総額が低い41社
「業績からすれば、今の株価が3~4倍になっても全然おかしくない。ゲーム市場は注目されているのに、投資家へのアピールが足りないのだろうか……」
東京都渋谷区に本社を構えるボルテージの津谷祐司社長は、自社の株価の低さに対してそう首をかしげる。
1999年創業のボルテージは、女性向けの恋愛読み物アプリなどを手掛けるモバイルゲーム会社だ。「女性向けゲームで上場した会社は、私たちが最初だった」(津谷氏)という。
そんな女性向けゲームの先駆者に、簡単にクリアできない難題が降り掛かっている。現在ボルテージは東証1部に上場しているが、新設されるプライム市場への移行基準である「流通株式時価総額100億円」を満たしていないのだ。
確かに、ボルテージは近年赤字続きであり、株価上昇の妨げになっていたとみられる。背景には、大手ゲーム会社など女性向けアプリ市場の競争相手が増えたことや、新規の事業投資がかさんでいたことがあり、2018年6月期決算はマイナス13億円の最終赤字まで落ち込んだ。
だが、赤字幅は徐々に縮小。コロナ禍で在宅時間が増え、全世界的にモバイルゲーム市場が活況を見せたことも追い風となった。実際に、ボルテージは21年6月期決算で、純利益1.6億円と4年ぶりの黒字転換を果たした。
ボルテージの流通株式時価総額は、6月末時点で24.5億円(後述するダイヤモンド編集部の試算では29.2億円)であり、東証がプライム移行の基準とした100億円まで道のりは遠い。
それでも、プライム市場を目指そうと、ボルテージは腹をくくった。国内外への投資家にアピールするために、リサーチ会社による調査レポートの作成に初めて取り掛かった。黒字転換を果たし、4年ぶりに復配もした。
これから本腰を入れるのは、原点である女性向け恋愛アプリの再成長と、電子コミック事業など新規領域への投資を両輪で回していくことだ。そうして、「売上高を100億円、200億円と拡大していく」(津谷氏)ことに連動する形で、マーケットでの評価を高めていくという。
ボルテージだけではない。東証の定義にのっとりダイヤモンド編集部が流通株式時価総額を算出し、東証1部上場企業のうちワースト300社を抽出したところ、ボルテージと似たような情報・通信業の企業が41社ランクインした。これら全ての企業に今、プライム落ちの危機が迫っている。
なお、前述のボルテージの順位はワースト6位だった。他にはどのような企業がランクインしたのか。早速次ページから、ボルテージを含めた41社の実名を紹介しよう。