東証1部からプライム市場に移行するための条件として、「流通株式時価総額100億円」という基準が設定された。業種ごとの流通株式時価総額ランキングを作成すると、飲食店不振の影響が大きい卸売業では、28社がプライム落ちの危機に直面していた。特集『東証再編 664社に迫る大淘汰』(全25回)の#9では、その顔触れを紹介する。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
五輪で株価急騰企業も市場評価は低迷
卸売業で流通株式時価総額が低い28社
7月25日。日本のスポーツ界が歴史的瞬間を迎えたさなか、「ある会社」が予期せぬ形で話題沸騰となった。
東京五輪からの新競技であるスケートボードの男子ストリート。東京都江東区の有明アーバンスポーツパークで開かれた決勝戦で、日本の堀米雄斗選手が金メダルを獲得して初代王者に輝いた。
このとき、試合とは関係ないところで注目を浴びたのが、水産物の卸売りから冷蔵物流サービスまでを兼ね備える総合的な水産企業であるホウスイだった。表彰式の中継で江東区にある本社が映り込み、「ホウスイ」という社名が長時間にわたり放映されたのだ。
この宣伝効果からか、翌26日にホウスイの株価は1割近く高値を付ける。テレビで連日CMが流れるスポンサー企業やスポーツメーカーに並び、ホウスイは「五輪銘柄」として名を連ねた。
ホウスイは、業績でも好調ぶりを見せている。新型コロナウイルスの感染拡大で外食産業は甚大な被害を受けたが、内食化の需要増加に支えられた。その結果、2021年3月期の純利益は、前年比75.9%増の7.9億円まで伸びている。
かくして上げ潮に乗っているかに見えるホウスイだが、それをかき消すほどのマーケットの“荒波”にのみ込まれようとしている。来年4月に控えた東京証券取引所の市場再編だ。
東証は、1部から新たな最上位のプライム市場への移行基準の一つとして、発行済み株式数と流動性の高い株式比率で計算される「流通株式時価総額」が100億円以上というバーを設けた。
だが、ダイヤモンド編集部の試算によると、東証1部上場のホウスイの流通株式時価総額は13.8億円にとどまっている。プライム市場への移行を望むならば、企業価値の向上のための施策を打つ必要がある。
ホウスイだけではない。東証の定義にのっとりダイヤモンド編集部が流通株式時価総額を算出し、東証1部上場企業のうちワースト300社を抽出したところ、ホウスイと同じ卸売業の企業28社がランクインした。これら全ての企業に今、プライム落ちの危機が迫っている。
なお、前出のホウスイの順位は同業種でワースト1位だった。他にはどのような企業がランクインしたのか。早速次ページで、ホウスイを含めた卸売業28社の実名を紹介しよう。