商社非常事態宣言#5Photo:koyu/gettyimages

コロナ禍が商社業界に襲い掛かり、五大商社の明暗を分けている。特集『商社 非常事態宣言』(全15回)の#5では、商社102社を対象に、最新決算から「コロナ耐久力」を独自に算出した。すると、ランキング上位に食い込む専門商社の存在や、大手商社が落ちぶれる様子が浮かび上がった。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

未曽有の危機に五大商社の明暗分かれる
商社102社の「コロナ耐久力」を独自試算

「負けた理由は単純で、ここ10年間の投資がうまくいっていない」――。三菱商事の現役社員は、淡々と敗戦の理由を振り返る。

 2021年3月期、商社業界の順位に地殻変動が発生した。

 業界首位の座を維持していた三菱商事の連結純利益が、前年比67.8%減益の1726億円まで減少。ライバルの伊藤忠商事は純利益の落ち込みを同19.9%減益の4014億円にとどめ、5年ぶりとなる首位交代劇が起きた。

 新王者となった伊藤忠は、純利益と株価、そして時価総額で悲願の「3冠」を達成した。片や三菱商事は、純利益3355億円の三井物産や同2253億円の丸紅にも抜かれ、一気に業界4位まで順位を落としている。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、未曽有の経済危機に陥った21年3月期。資源やエネルギー、繊維や生活産業などありとあらゆる産業に携わる総合商社は、コロナ禍の影響が節々に出た。すでに20年3月期に赤字に陥っていた丸紅を除き、五大商社のうち4社が減益となっている。

 そんな中で三菱商事は、合計1542億円の減損計上が痛手となった。中身を見ると、17年2月に子会社化したローソンや、18年3月にTOB(株式公開買い付け)で持ち分法適用会社にした三菱自動車で減損が発生。冒頭の社員が言うように、大規模な投資案件が実利に結び付いていない実情が見て取れる。

 ただ、最も凋落ぶりが露呈したのは、1531億円という過去最大の最終赤字に転落した住友商事だろう。コロナ禍の影響で操業停止となっていたマダガスカルでのニッケル鉱山開発を筆頭に、多額の損失を計上。加えて、脱炭素の流れで五大商社全てが石炭火力発電からの撤退を余儀なくされる中で、住友商事は石炭火力の発電量を最も多く残していることも懸念事項だ。

 優勝劣敗が明らかになったのは、五大商社だけではない。「K字回復」といわれるように、業種や個別企業によって、コロナ禍での業績の回復度に大きな差が生まれている。その影響を強く受けるのが、総合商社とは違い特定の商材を扱う専門商社だ。

 コロナ禍によって、商社業界ではどのような明暗が生じたのか。それを調べるために、ダイヤモンド編集部では、商社102社を対象に「コロナ耐久力」ランキングを作成した。

 詳しくは記事末の「ランキングの作成方法」に譲るが、収益性、経営の効率性、健全性、市場評価の四つの観点に基づき、純利益、ROA(総資産利益率)、ネットDER(純負債資本倍率)、時価総額の実額と今年1年間の増減率の五つを基に総合偏差値を算出した。

 早速次のページから、ランキングの結果を見ていこう。