――努力が認められたわけですね。

青栁 技術を習得し、ホームページで告知すると、お客さまから主に2パターンの問い合わせを頂くようになりました。

 一つは、国内の工場で、欧州の機械を導入するケース。もう一つは、日本の装置メーカーが、海外の企業に装置を納品する際、シーメンスのPLCを使った設計を依頼されるケースです。

 大手企業でも知見がないことが多いようで、一度取引が始まると、リピーターになっていただけます。

――先見の明といえるのでは?

青栁 正直に言うと、勝負に出た背景には、リーマンショックもあります。それまでは弊社も国内メーカーのPLCでしか設計できず、競合との価格競争に苦しんでいたのですが、なかなか次の手を打てずにいました。しかし、リーマンショックで仕事が激減し、それでようやく踏み切れたというわけです。

――何が幸いするかわかりませんね。

青栁 シーメンスにかじを切った後も、楽に顧客開拓できたわけではありません。 滋賀中央信用金庫さんにも、毎年開催している展示会にお誘いいただくなど支援を受けてきました。その場で地元企業に売り込み、新規顧客の開拓につながりました。

――今では、他の事業にも取り組まれているそうですね。

青栁 18年からは、フランチャイズで小中学生向けのロボットプログラミング教室を運営していて、現在100人近い生徒がいます。目的は、エンジニアという仕事を子どもたちに知ってもらうこと。将来、弊社に入社する人が育てば最高ですが、そうでなくても、この教室をきっかけにSEやプログラマーになる子どもが増えればいいなと考えています。

国内では希少な自動化技術で固定客を獲得 リーマンショック後の勝負手が功を奏す未来のエンジニアを育てるロボットプログラミング教室
●株式会社PRO-SEED(プロシード) 事業内容/産業用自動化設備、SIEMENSソリューションパートナー、ロボットプログラミング教室運営、従業員数/15人、売上/3億7000万円(2020年度)、所在地/滋賀県彦根市原町192-1、電話/0749-24-8737、URL/pr-seed.com

 これはずっと先の話ですが、この彦根の街を「エンジニアの街」にしたいという夢も思い描いています。昔ながらの城下の町並みがある一方、1本入った通りでは、ロボットが接客する近未来の商店街がある――。そんなことが実現できたら面白いなと考えています。

――そうなれば彦根が盛り上がりますね。

青栁 地元・彦根に貢献していきたい気持ちも年々強くなっていて、コロナ禍になってからは、会社の壁面に取り付けたLEDビジョンで、地元企業の広告を無料で流せるようにしました。また、滋賀大学データサイエンス学部やプロバスケットボールチームの滋賀レイクスターズと、試合のデータ活用の研究に取り組んでいます。

 とはいえ、本業である自動化設備のエンジニアリング事業を成長させることが第一です。30年には年商を10億円に乗せることを当面の目標にしています。

(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2021年9月号掲載、協力/滋賀中央信用金庫