日立 最強グループの真贋#7Photo:Bloomberg/gettyimages

コーポレートガバナンスの強化を背景に、経営者が受け取る報酬の“妥当性”が問われる傾向が強まっている。かつて日本の産業界を席巻した「総合電機メーカー」の役員はどの程度の報酬を得ているのか。特集『日立 最強グループの真贋』(全12回)の#7では、電機6社(日立製作所、東芝、ソニーグループ、パナソニック、三菱電機、シャープ)の役員報酬を徹底検証したところ、意外な「企業間格差」が浮き彫りになった。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

東芝前社長の退任時に「一悶着」
役員報酬に向けられる厳しい視線

 今年4月、経営混乱の責任を取るかたちで、東芝前社長兼CEO(最高経営責任者)の車谷暢昭氏が辞任した。

 その際に、車谷氏に支払われる報酬問題で一悶着あった。2021年3月期の車谷氏の報酬(固定報酬)は1億4500万円。これとは別に設けられている「業績連動報酬」の支払いが留保されているのだ。昨年7月の株主総会が公正に運営されたか否かなどの真相究明やその対応が完了するまで、支払うかどうかの判断も含めて“待った”がかかっている。

 そもそも、在任中から車谷氏の待遇に疑問を投げ掛ける声は上がっていた。

 ある東芝関係者は、「独シーメンスや業績好調な日系電機メーカーをベンチマークにして、経営者が最大で3億~4億円の報酬を受け取れるようにルールが改定された。それらの企業と東芝が置かれている状況は全く違うのに」と怒りをあらわにする。事業が切り売りされるなど、社員がリストラに耐え忍ぶ中での改定だっただけに、「車谷氏から人心が離れていった」(同)という。

 7月末、三菱電機の杉山武史社長兼CEO(当時)が、鉄道車両などの検査不正の引責で辞任した。三菱電機といえば、国内電機の優等生とされてきた企業。幹部候補社員のモチベーションを上げる狙いもあり、13年に役員報酬に占める「業績連動部分」の割合を増やした。高給取りが急増し、ピーク時には年収1億円超プレーヤーが23人もいた。

 だが、皮肉なものだ。ひとたび重大な不祥事が発生すると、高額報酬を得ている経営陣への風当たりが強くなりがちだ。

 東芝の経営混乱、三菱電機の不祥事連発――。経営が難局に直面すると、当然のことながら経営者はその責任を追及される。

 日本の産業界では、グローバルな賃金水準に合わせる目的から、役員の高額報酬化が急速に進んでいる。実績を残せた者は、従来よりも大きな果実を手にすることができる。その一方で、業績不振や不祥事の責任を問われた者には、一気に報酬が目減りする厳しい結末が待っているのだ。

 ここでは、電機メーカー6社(日立製作所、パナソニック、ソニーグループ、三菱電機、東芝、シャープ)の役員報酬を徹底検証した。すると、企業間格差が浮き彫りになる“驚くべき結果”が明らかになった。

 では、実名入りランキングの詳細を見ていこう。