そんな心細い日々の力強い味方になってくれるのが補中益気湯という漢方薬です。補中益気湯は免疫力を高める作用があるので、病気に対する抵抗力を高めてくれます。

 補中益気湯は、病原体の入り口となる消化管の粘膜に配備された樹状細胞を活性化し、そのセンサーの感度を高める働きがあります。粘膜上の樹状細胞の働きがよくなれば、病原体の情報が正確にいち早く身体の免疫司令部に伝わり、敵を効率よく排除することが可能となります。

 また、補中益気湯は、粘膜上の免疫システムだけでなく、腸管の機能を全般的に改善して腸管免疫を底上げします。その結果、腸管が全体として調子よくなり、食欲も増して元気になるという流れを促進してくれるのです。

自宅療養中に症状を悪化させないために

 また、自宅療養中に肺炎に悪化させないための予防として、次の漢方を紹介します。

【処方例】
・[東洋]葛根湯
1回2g、1日3回(朝昼夕)を7日分
・ツムラ小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)
1回2.5g、1日3回(朝昼夕)を7日分

 上記2種類を同時服用。状況によって14日まで延長してもかまいません。この組み合わせは、次の柴葛解肌湯の近似処方です。

【第2類医薬品】
・柴葛解肌湯 エキス細粒G「コタロー」
1回2.5g、1日3回(朝昼夕)を7日分

 状況によって14日まで延長してもかまいません。

 この段階になりますと、もはや「軽症」ではなく、「中等症I呼吸不全なし」になります。「中等症II呼吸不全あり」に進まないようにするにはどのような対策があるのでしょうか。

 この段階では、パルスオキシメーターで酸素飽和度を、少なくとも1日3回は測定する必要があります。酸素飽和度が93%以下の危険水域にまで下がっても、呼吸困難を感じない人がいるからです。Happy hypoxia(幸せな酸素不足)という危険な徴候です。

 治療薬としては、レムデシビルの使用は考慮されますが、デキサメタゾンなどのステロイド薬は、症状を悪化させる可能性があるので使用すべきではないとされています。

 抗体カクテル療法の薬ロナプリーブは、2種類のウイルス中和抗体「カシリビマブ」と「イムデビマブ」を組み合わせたもので、新型コロナウイルス感染症に対する治療および予防を目的とした薬です。厚生労働省によりますと、自宅療養や宿泊療養も含めた、療養者全体の十数%が投与対象になり得ると推計され、すぐに需要の逼迫が予想されます。