クラブハウスが下火になっても「音声メディア」の可能性が広がり続ける必然Photo:123RF

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。

「クラブハウス」ブームが示した
「声」の可能性

 2021年初頭のインターネット界隈で話題をさらったものといえば、「クラブハウス」が筆頭に挙がるのではないだろうか。これは周知の通り、米国発の「音声」に特化したSNSだ。本国でサービスがローンチされたのは2020年4月だが、2021年1月に本格的に日本上陸を果たす。すると、何人もの有名人が発信を始めたこともあり、またたく間に利用者が拡大、一大ブームとなった。

 だが、3月に入る頃には、早くも人気が沈静化。もちろん使用が習慣化しているユーザーも少なくないのだろうが、今では話題に上ることも少なくなった。

 人気が衰えた理由については、さまざまなメディアで考察されているが、おそらく、参加が「招待制」だったことが大きいのではないか。7月に「ベータ版」終了とともに自由に参加できるようになったが、当初は既存ユーザーから招待されなければ入会できず、しかも招待枠が1人2枠しか与えられていなかった。

 また、5月にAndroid版アプリが配布されるまで、iPhoneでしか使えず、アプリの使い勝手も決して良いとはいえなかった。さらに、発信された音声は録音不可で、リツイートのように拡散できない仕様になっていた。クローズドなサービスのまま人気が爆発したために、ユーザー拡大のチャンスを逸したのだろう。

 しかし、クラブハウスが示した「音声メディア」の可能性はついえたわけではない。フェイスブックは今年4月に、音声特化型SNSサービスの新設を発表、6月に米国で「Live Audio Rooms」という名でスタートした。ツイッターも、昨年12月からテストを行っていた音声チャットサービス「Space」を、今年5月からフォロワー数600人以上のユーザー限定で正式スタートしている。

 アップルやアマゾン、スポティファイなどで配信されているポッドキャストの人気も高い。今年7月期放送の深夜ドラマ「お耳に合いましたら。」(テレビ東京系)は、元乃木坂46の伊藤万理華さん扮する主人公がポッドキャスト番組を始めるストーリーで、スポティファイのポッドキャスト番組との連動も注目された。