JAグループ京都会長の中川泰宏が近年、最も力を入れているのが京野菜を使った料理を海外で振る舞う晩餐会だ。農産物の輸出拡大のための国の予算が1回2500万円も投じられるこのイベントは、現地在住の招待客より、日本からの参加者の方が多い“いびつ”な構成比率で開催されている。連載『農協の大悪党 野中広務を倒した男』の#20では、中川の政治力アップという私的な目的のために行われている海外晩餐会の虚構を暴く。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
輸出拡大目的の海外晩餐会なのに
招待客の過半は“お友達”の日本人
衆議院議員でなくなってから全国的な脚光を浴びることがなくなった中川泰宏が年に1度、NHKなどの全国ネットのテレビ番組に登場する機会がある。自ら陣頭指揮を執って海外で開催する晩餐会だ。
中川は和装で会場に現れ、外国の政府高官ら200~300人を前にまるで“主催者”であるかのようにあいさつする(実は主催者ではないのだが、その点は後ほど詳述する)。まさに晴れの舞台だ。「中川は事前に会場入りし、カメラの角度などテレビ映えするよう事細かに指示する」(JAグループ京都関係者)ほどの力の入れようだという。
水菜や万願寺甘とうなどの京野菜や宇治茶を使った料理を振る舞うこのイベントには、農産物輸出拡大のための国の予算が毎回2000万~2500万円、5回分で合計1億2000万円が使われている(正確には晩餐会だけでなく、その翌日にレストラン経営者らを対象に行われる小規模な試食会など一連のPRイベントに投じられる予算を含む)。
フランスのベルサイユ宮殿などの豪華な会場に大勢のエグゼクティブを集めて開かれる供宴は、その華やかさもあって国内外の多くのメディアに取り上げられる。
農産物の貿易自由化反対など、何かと内向きになりがちな農業界にあって、中川に「海外市場を開拓する改革派のリーダー」というイメージがあるのもこの派手なイベントのおかげだ。
しかし、晩餐会について調べていくと、その主目的は輸出拡大ではなく、中川の政治的な影響力の拡大という私的なものなのではないかと考えざるを得ない実態が浮かび上がってきた。