個人投資家が金融機関に運用を任せるという「ラップ口座」「ファンドラップ」。金融機関イチ押し商品とあって運用残高を順調に増やしている。だが、あらかじめ知っておくべき難点がある。高コストぶりや運用効率の悪さである。特集『株投資 入門&実践』(全18回)の#2ではそれをデータで明らかにしていこう。(ダイヤモンド編集部論説委員 小栗正嗣)
本当のコストやリターンはどのくらい?
実態が見えにくい銀行・証券の「ラップ口座」
「金融のプロにお任せ」「あなたに最適な運用を」――。
こううたうラップ口座は、金融機関がお客と投資一任契約を交わし、お客に代わって資産運用をするサービスだ。
お客ごとに資産を包む(ラップ)ように専用口座を設け、運用目的やリスク許容度に応じた資産配分に沿って、専用ファンドを組み合わせて運用する。
金融機関によって名称はさまざまだが、一般的には「ファンドラップ」、富裕層向けは「SMA(Separately Managed Account)」が主に使われる。
このラップ口座が順調に増えている。2021年6月末時点で運用残高が約11兆9000 億円、口座数は約 122万件。15年3月末の残高は4兆円に満たなかったことを考えると、かなりの急拡大であることが分かる。
普通の投資信託に投資する場合、お客自身が何を、どのタイミングで買うのかを決めなくてはならない。購入時には商品ごとに販売手数料も取られる。
それに対して、ラップ口座は300万~500万円以上のまとまった資金があれば、大まかな方針を選ぶだけで、後は資産運用を金融のプロに“お任せ”できる。手軽なのは間違いない。
金融機関にとってもいい話だ。ラップビジネスはお客の資産残高にまるまるフィーをかける資産管理型のビジネス。かつてのように手数料目当てに短期間で投信の買い替えを促し、「露骨な販売手数料稼ぎ」「回転売買だ」とたたかれることもない。
ところが、ラップ口座については、肝心の実態がよく分かっていなかった。コストは一般的にファンドラップ手数料などと呼ばれる管理費用、投資一任受任料、それに投信そのものの保有コストである信託報酬が別にかかってくる。投資一任受任料には固定報酬、実績連動などさまざまなパターンがあり、料金の仕組みは極めてややこしい。
リターンについても、お客にカスタマイズされ、専用ファンドを組み合わせたポートフォリオで運用されるため、お客ごとにばらばらだ。
このようにベールに包まれていたファンドラップのコスト、リターンの実態は、一体どうなっているのか。ここにデータがある。