欧米のエネルギーユーザーは寒さが近づくにつれ、天然ガスの在庫不足に神経を尖(とが)らせている。この冬は北東アジアでも暖房費が高騰するかもしれない。その一因は世界的な天然ガス不足にあるが、もっと身近なところにさらに大きな要因がある。中国では、危険で老朽化した炭鉱業界の状況を改善するための新たな取り組みによって、供給が伸び悩み、石炭価格が高騰している。それは液化天然ガス(LNG)市場にも波及している。こうした状況は、回復途上にあった中国景気に政府の鉱山閉鎖が打撃となり、石炭価格のすさまじい高騰を招いた2016年末をほうふつとさせる。鉱山の安全性を優先する今回の取り組みは、重慶近郊で39人の労働者が死亡した2件の悲惨な鉱山事故をきっかけに、2020年末に始まった。その結果、2021年初めに電力需要が記録的なペースで増加していたまさにその時期に、石炭生産量が大幅に減少することとなった。今年3月から8月までの国内石炭生産量は前年同期比で平均1.5%縮小。その一方で、同期間の電力生産量は平均8.9%増加した。このため冬の暖房シーズンに向け、発電所の在庫が急速に減少している。CQコールのデータによると、東部の主要7省では先週、平均在庫がわずか12.5日分と、少なくとも2015年以来の低水準となった。これは2020年10-12月期の平均値の半分にも満たない。