ビール蒸発という緊急事態に直面するビール2強。その出世事情を見ると両者は対照的だ。キリンホールディングスの役員にはプロパー出身の「茶坊主」が並び、アサヒグループホールディングスは「外様」が多数を占める。特集『ビール蒸発』(全8回)の最終回では、ビール2強の出世とカネの裏事情を追った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
年収1325万円のアサヒ、874万円のキリン
営業系は40代で1000万円に到達
アサヒが1325万円、キリンは874万円――。
2020年12月期の有価証券報告書に記された、アサヒグループホールディングス(GHD)とキリンホールディングス(HD)の平均年収だ。
アサヒGHDの平均年収はキリンHDの約1.5倍。アサヒGHDの好待遇ぶりが目立つが、実はこの「格差」にはカラクリがある。アサヒGHD籍の社員は313人で、各事業会社での部長級経験者など、HDを取り仕切る精鋭たちのみが集まっている。傘下のアサヒビールなどの社員は含まれていないのだ。
一方のキリンHD籍の社員は1117人で、19年7月に中間持ち株会社であった「キリン株式会社」を吸収合併したことで社員数が多い。キリンHD籍に占める一般社員の比率はアサヒGHDと比べて高いとみられる。これが2強の格差の理由だ。
実際、現場レベルでの両社で待遇に大きな差はない。一般的なケースを紹介しよう。
営業系社員の場合、入社から年功序列で給料は上がっていき、40代で支店長になれば年収は1000万円前後に到達する。さらに50歳前後で支社長に昇格できれば、年収1200万円を超える。50代中盤でエリアを統括する本部長になれば、年収1600万円超が約束される。
国内市場の縮小が続き、斜陽化が進むビール業界ではあるものの、給料という待遇面では食品業界の中でもトップクラスを維持しているのだ。
給与水準は仲良く横並びの一方で、ビール2強の出世事情は対照的だ。
「キリンHDの幹部は“茶坊主”ばっかりだ」。複数のキリン関係者はこう指摘する。いったいどういう意味なのか。