アサヒビールの塩澤賢一社長がダイヤモンド編集部のインタビューに応じた。トップブランドのスーパードライの需要「蒸発」が続く非常事態に、塩澤氏は「スーパードライに次ぐ、第2の柱を生み出す」と強調した。特集『ビール蒸発』(全8回)の#5では、劣勢をはね返す挽回の一手をトップが激白した。(ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)
コロナで業務用販売は5割の厳しい状況
それでも「重要市場は捨てない」
――新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ビールの販売が大きく落ち込んでいます。
コロナ前から家飲みが広がっていたこともあり、家庭用は堅調に推移しています。一方、業務用はコロナの感染状況に大きく左右されます。コロナ前の2019年と比べ、販売が1割を切った時期もありました。7〜8割に戻したこともありますが、全体では5割程度と厳しい状況が続いています。
今後の見通しは極めて難しいです。ただし、10月に緊急事態宣言が解除されたので、最も書き入れ時の年末年始に向け、感染状況が落ち着き、需要が回復していくことを期待しています。
――堅調な家庭用に業務用から軸足を大きく移す考えはありませんか。
確かに足元では業務用が壊滅的という現実があります。加えて、業務用が回復しても、コロナ前と同じ水準には戻らないという見方も強いです。
しかし、われわれにとって業務用が重要な市場との位置付けは変わりません。例えば、スーパードライがヒットした背景には、飲食店や酒販卸が消費者に薦めてくれたことが大きいのです。業務用は家庭用を伸ばすための重要な接点です。業務用を捨て、家庭用に一本化する考えはありません。
――それでは今の危機をどのように打開していくのですか。