最初にお断りしておきたいのが、日本のプロ野球界には公式戦に出場した全選手の名簿はあるが、在籍した全選手の名簿は存在しないということだ。そのため、ここで集計されているのは筆者が独自に調査したもので、まだ一部に未集計の選手が残っている可能性がある。

 また、名門・古豪といわれる歴史の古い学校には、途中で分離や合併など様々な変遷のある学校も多く、どの学校をもってどの学校の前身とするかの見解がわかれる学校もある。そのため、多少の誤差が生じることをご了解いただきたい。

 それでは今年の注目校から見ていこう。

あの伝説校に「異変」
来年、首位交代か

第5位 龍谷大平安高(京都府) 61人+今年1人指名
 龍谷大平安高も、年配の方には「平安高」という名称の方がなじみがあるだろう。龍谷大平安高と改称してからも2014年選抜で優勝するなど、戦前の平安中の時代から現在まで、一定の数をプロに輩出し続けている。

 古くは衣笠祥雄(広島)、現役では炭谷銀仁朗や酒居知史(ともに楽天)らがOBで、今年は岡田悠希(法政大、巨人5巡目)が指名された。

第4位 広陵高(広島県) 66人+今年1人指名
 第4位は広陵高。同校もやはり戦前からの名門だが、プロ入りに関しては平成以降の方が勢いがある。中村奨成(広島)はじめ、21世紀以降だけで7人がドラフト1巡目で指名されるなど、中井哲之監督の育成力には定評がある。OBは広島が多く、現役では野村祐輔(広島)、有原航平(米レンジャース傘下)など。2年連続しての指名で、今年は吉川雄大(JFE西日本、楽天7巡目)が指名。

第3位 横浜高(神奈川県) 73人+今年1人指名
 ここまで紹介した高校が戦前からプロに人材を送り込んでいるのに対し、横浜高は戦後に創部した学校で、当然プロ入りしたのもすべて戦後。しかも73人のほとんどは渡辺元智元監督が育てた選手で、渡辺元監督はおそらく日本で最も多くのプロ野球選手を育てた監督であろう。愛甲猛(ロッテ)、松坂大輔(西武)など、高校野球史に名を残す選手も多い。

 渡辺監督辞任後、監督や部長の交代が続いたが、一昨年2人、昨年4人に続いて、今年も福永奨(国学院大、オリックス3巡目)が指名された。

第2位 中京大中京高(愛知県) 79人+今年4人指名
 第2位は中京大中京高。戦前から戦後にかけては中京商、昭和後半は中京高、平成以降は中京大中京高と、校名は変化しつつも、常に高校球界のトップに近い位置に存在し続けている。

 甲子園での春夏合わせた優勝11回や、通算136勝などは断トツの1位だが、プロ選手の数は第2位。実は、プロ入り人数でもしばらくトップを走っていたが、平成以降のプロ入りはあまり多くなく、トップの座を譲り渡してしまっていた。しかし、昨年2人指名されたのに続いて、今年は鵜飼航丞(駒沢大、中日2巡目)、中村健人(トヨタ自動車、広島3巡目)、畔柳亨丞(日本ハム5巡目)、伊藤稜(中京大、阪神育成1巡目)と一挙に4人指名された。これで、全員が入団すればトップに返り咲くことになる。現役ではヤクルトの嶋基宏や、広島の堂林翔太らがOB。

第1位 PL学園高(大阪府) 82人
 第1位は1980年代から90年代にかけて黄金時代を築いたPL学園高。PL学園高の創立は1955年で、創部はその翌年。最後の年である2016年までの61年間に82人という人数は、1つの代から平均1.3人がプロ入りしているという極めて高い率だ。実際、1980年代頃には1つの学年から数人がプロ入りするのも珍しくなかった。

 しかも、ただ人数が多いだけではなく、清原和博(西武他)・桑田真澄(巨人他)をはじめ、木戸克彦(阪神)、小早川毅彦(広島他)、立浪和義(中日)など多くの名選手をプロに供給してきたことで知られる。現役では前田健太が大リーグ・ツインズで活躍中。

 しかし、そのPL学園高も2013年秋に専任監督が不在となり、2016年夏の府大会出場を最後に休部してしまった。一昨年のドラフトで東洋大の中川圭太選手がオリックスに指名されたのが最後で、来年はついに中京大中京高にトップを譲り渡す見込み。来年以降のドラフト候補に同校のOBは見当たらず、挽回は難しい。