新型コロナウイルスの変異株が猛威を振るったインドだが、足元で感染状況は落ち着きつつある。今年4~6月期のGDPは、前年同期比では2割の増加となった。しかし、原油高、ルピー安から来るインフレ懸念、石炭が十分に確保できないことによる電力不足など新たなリスク要因が浮上しつつある。(第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト 西濵 徹)
前年同期比で見ると20%超の
高成長だった21年4〜6月期
インドは、昨年以降における新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に際して感染拡大の中心地となったほか、その度に行動制限が強化されたことで幅広い経済活動に悪影響が出る事態に直面した。
年明け以降も感染力の強い変異株が猛威を振るい、政府は感染爆発の中心地となった首都デリーや最大都市ムンバイなど大都市を対象に外出禁止措置を発動するなど、事実上の都市封鎖による人の移動抑制に動いた。さらに、欧米や中国など主要国においてワクチン接種の進展が経済活動の再開を後押ししたことを受け、ワクチン接種を加速化させてきた。
インドのGDP(国内総生産)統計は、前年同期比ベースのみが公表されているが、今年4~6月期はプラス20.1%と過去にさかのぼって最も高い伸びとなった。この数字を見ればインド景気は底入れの動きを強めているようにみえる。
しかし、これは新型コロナウイルスの感染拡大と感染対策のために実施した全土でのロックダウンの影響で、昨年の4~6月の実質GDP成長率が前年同期比マイナス24.4%と過去最大のマイナス成長幅となった反動が影響していることに注意する必要がある。