10月からは病院に対する国の補助金に切り替え
発熱外来設置や自宅療養者対応の病院には手厚い加算が

 10月以降は、医療機関の感染防止のための経費として、診療報酬での加算ではなく、感染対策の実績に応じた国の補助金(病院と有床診療所は最大10万円、無床診療所は最大8万円、12月末まで)に切り替えられる。この見直しによって、患者が負担していた10円の加算(70歳未満の場合)もなくなる。

 一律の加算はなくなるが、10月以降は、コロナ患者の診療に積極的な医療機関への診療報酬の加算は拡充される。たとえば、発熱外来などを開設し、自治体のホームページで公表している診療所や、自宅や宿泊施設で療養しているコロナ患者への緊急往診などを行っている在宅診療所などに、手厚い加算が行われることになった。

 ちなみに、「加算が増える」というと「コロナ患者の自己負担が増える」と思われるかもしれないが、そういったことはない。というのも、現在、COVID-19は国の「指定感染症」に定められているため、治療にかかる一連の費用(検査、診察、医薬品、医学的処置、入院費など)は公費負担となっているからだ。自治体によっては、高所得層に対して一定の自己負担を規定しているところもあるが、原則的に患者に医療費が請求されることはない。そのため、COVID-19の診療に関する加算が拡充されても、患者の負担が増えることはないので安心してほしい。

 また、6歳未満の乳幼児の外来加算の臨時特例は、10月以降も当初の予定通り、規模を縮小して継続される。本来の6歳未満の自己負担割合は2割だが、乳幼児の医療費については、ほとんどの自治体が医療費助成を行っている。子どもは無料、または500円程度の定額負担で医療を受けられるので、COVID-19の感染予防加算が継続されても、自己負担への影響はまずない。

 このように、現状ではCOVID-19の治療を受ける際、個人に費用負担を求められる場面はほとんどない。ただし、日本全体の医療財政の今後のあり方という視点からだと、違う側面も見えてくる。ここで見てきた通り、コロナ病床の確保や医療機関の感染対策のための費用が大きく動いており、その原資は国民が納めた税金や社会保険料、赤字国債などから拠出されているからだ。コロナ対策費用の使い方は、持続可能な医療システムのあり方や、ひいては将来的な国の運営にも深く関わってくることになるのである。

 医療費の話は、患者の自己負担に目が行きがちだが、コロナ対策のために国の補助金や診療報酬の特例制度が、どのように使われたのかも頭の片隅に入れておきたい情報だ。