貯金が増えない本当の理由

 さらに家計について伺っていくうちに、思うように貯まらない最大の理由が分かりました。毎月10万円ほど貯金に回せるものの、時には旅行、外食、洋服の購入などにお金を使うことがあり、そういう時は貯金を切り崩して支払いをしているそう。私は家計状況を基本的に「月ベース」で見るのですが、それ以外の「年ベース」の支出が異常に多額だと思える金額だったのです。

 旅行時のホテルは一流ホテル、外食時には高級なお酒、洋服は量販店の物は絶対に買わないなどとこだわっています。ご本人たちは「お金の使い方にメリハリをつけている」と思っているようですが、バランスが極端だと感じました。お金を使っても良いのですが、目的の確認をしたところ「時に大きく使いたいから」ではないのです。節約の出発点が「お金をためたい」というところから始まっているはずなのに、そこがズレてしまっている以上、再認識すべきだと感じます。日々、つらそうなほどの節約をしてためたお金を“こだわり”で使ってしまっているという現実に気付いていなかったようです。

 結局、Kさんは節約に偏りすぎ、将来の生活を守る保障を備えず、自分で気付けない部分でお金を使ってしまっている、そして時に周囲にも引かれ、迷惑をかけることもあった、いわば「節約バカ」の状態だったのです。

 節約は大切ですし、お金をためるために必要な行動です。ただ、そのために「なんでも安く抑えよう」という精神は良くありません。必要なことにはしっかりお金をかけ、そうではないところの支出を下げる。これが望ましく、取り組むべき節約であり、本当の意味で「支出にメリハリをつける」ということだと思うのです。