政権公約で鮮明なのは
甘利幹事長と高市政調会長のカラー

 総裁選での「論功行賞人事」と批判された党役員や閣僚の人選に、「3A」と称される安倍晋三元首相や麻生太郎副総裁、甘利明幹事長の影響力が働いたのは、今や国民の多くが知るところだ。その力関係は人事面だけではなく、政策面でも顕著に表れている。

 ある閣僚経験者は「政権公約は、総裁選で岸田支持を固めた甘利幹事長と、安倍氏の全面支援を受けた高市早苗政調会長のカラーが鮮明。よくいえば岸田首相が得意の『聞く力』で受け入れたといえるが、総裁選で争った人の主張をここまで盛り込むと誰がトップなのか分かりにくい」と指摘する。

 無色透明、変幻自在という評もつきまとう岸田氏。その傾向は首相就任後初めての所信表明演説でも見えた。

「全閣僚がさまざまな方と車座対話を積み重ね、国民のニーズに合った行政を進めているか徹底的に点検するよう指示していく」

 多様な価値観が尊重される時代、コロナ禍に苦しむ国民の声を吸い上げようとの意欲そのものに反対の人は少ないだろう。懸念されているのは首相が用いる言葉にある。

岸田首相の言葉は借り物ばかり
谷垣元総裁、石破元幹事長、安倍元首相…

 所信表明演説でアピールした「車座対話」は、野党時代の谷垣禎一総裁(当時)が実施していたものだ。2009年からの約3年間、党幹部が全国各地を回り、有権者との意見交換を通じて政策に磨きをかけた。

 もちろん、政策や政治姿勢に「著作権」は存在しない。首相就任後初めての週末に早速、医師や看護師らとの対話に臨んだことも岸田首相の行動力を示すものだ。ただ、「他の人のまね事ばかりが目立ち、岸田首相自身の独自色がない」(財務省幹部)ことが不安視されているのである。