「日本国憲法第7条により、衆議院を解散する」。10月14日午後の衆院本会議。この日を限りに政界を引退した衆院議長の大島理森が解散詔書を読み上げた。大島は憲法順守を強く訴え、衆院議員の任期満了(10月21日)を超える選挙に難色を示してきた。
しかし、結果は前首相、菅義偉の退陣を誘発した自民党総裁選の実施で、憲政史上初めて「任期超え総選挙」を余儀なくされた。解散から5日後の19日公示、投開票日31日も前例のない短期決戦だ。与野党共にあたふたと、異例ずくめの選挙戦の準備を急ぐ。
ただ自民党にとって総裁選による局面転換は成功といえる。内閣支持率および自民党支持率が反転したからだ。菅が退陣表明した9月3日以前の内閣支持率はおおむね30%前後。それが岸田文雄に首相が交代してからは最も低い「朝日新聞」でも45%。最も高い「産経新聞」は63%に達した。ただ支持率の平均値は40%台後半から50%台にとどまっている。
危険水域を脱したとはいえ、歴代内閣が発足直後に記録したご祝儀相場には届いておらず、岸田周辺からは「小渕恵三内閣を目指す」との声が聞こえてくる。1998年7月に発足した小渕内閣の支持率は32%(共同通信調査)。小渕自身が「ゼロからの出発」と語ったほどだったが、1年後の99年7月には57%にまで上昇した。