日東駒専&産近甲龍#13Photo:JIJI

大学のブランド力向上のためスポーツに注力する大学は多い。日東駒専・産近甲龍などの中堅私立大学でもスポーツは盛んだ。だが、実際にスポーツはどの程度大学のイメージ向上に寄与するのか。大学のイメージの壁を打破する鍵となり得るのか?特集『MARCH・関関同立に下克上なるか!?日東駒専&産近甲龍』(全19回)の#13では、各メディアで活躍中のスポーツライター、小林信也氏が中堅私大における“大学スポーツの価値”に迫る。

「何分か先頭で画面に写ってくれ」
大学側から要望される箱根駅伝

 これまで大学は、知名度やイメージ向上のためにスポーツを活用してきた。大会で優勝すれば大学の名前がテレビや新聞、雑誌、いまならネットで取り上げられる。その広報効果は絶大だ。

 日本体育大学の取材に行った際、ある競技の監督が教えてくれた。

「日体大の世間的な認知度は、全大学の中で10番目という調査結果があります。やはり、運動部の活躍が大きいのでしょう」

 総合大学ではない、スポーツ関連に特化した大学の知名度が全大学で10位とは、スポーツの高い広報効果を示す一つの証しだろう。

 ただ、かつて多くの競技で中心的存在だった大学スポーツが、いまはマイナー化しているのも事実で、ラグビーの早明戦が徹夜の行列を作り、大学ラグビーが日本で最も注目を浴びるラグビーイベントだったのは少し前の話。六大学野球がプロ野球をしのぐ人気を誇っていたのは60年も前の話だ。

 それでも、いまも大学の広報宣伝に大きく貢献するのは「箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)」だ。日本テレビが全国中継を始めた1987年以降、正月の国民的行事となった。人気は健在で、今年も往路31.0%、復路33.7%、いずれも歴代最高視聴率を記録した(数字はビデオリサーチ調べ、関東地区平均視聴率)。箱根駅伝のテレビ中継で名前が出るかどうか、つまり出場できるかどうかは大学の経営にさえ影響を与えるといわれる。優勝が無理なら「1区だけでいいから、何分間か先頭で画面に写ってくれ」と大学側から要望される監督もいるとうわさされる。

 関東の中堅大学の代表格、日東駒専も箱根駅伝では常連校だが、偏差値では上位大学と肩を並べられない大学にとって、スポーツはどの程度価値があるものなのか?次ページからは、スポーツが大学ブランドに与える効果や、「体育会の学生は採用したくない」と企業に言われるようにもなっている環境変化について、詳しく見ていく。