各候補の主張を見極めるべし

 さらに、岸田政権が掲げる「新自由主義からの転換」などを自分たちにとっての好機と見た日本維新の会は、「改革」の名の下に大規模な規制緩和や行政改革、「身を切る改革」に代表される歳出の削減を前面に出してきた。つまり彼らは、「改革」対反「改革」を争点としたいということだろう。

 彼らの「改革」とはご覧のとおり時代遅れの新自由主義改革である一方、彼らは必要な財政支出は行うと主張しているが、そのために別の政策分野の予算を「無駄」として削減することなどが前提となっている。その一つが先にも触れた「身を切る改革」であるが、要は歳出を拡大すると見せかけた緊縮財政ということであり、緊縮・新自由主義対積極財政・脱新自由主義という争点の、まさに好敵手ということである。

 無論、候補者ベースで見ると、与野党問わず、この争点の両側に候補が混在している。自民党の中にも緊縮・新自由主義をいまだに標榜する候補もいれば、積極財政・脱新自由主義が世界的潮流、時代の要請であることをしっかりと理解して、それに沿った主張をしている候補もいる。立憲民主についても国民民主についてもそうであり、選挙区によっては両候補とも同じ方向を向いている場合もあれば、野党候補が積極財政・脱新自由主義であるのに対し、与党候補が緊縮・新自由主義推進という場合もある。

 こうなるともはや政党としての公約とは無関係に、その候補の主張をしっかり見極める必要が出てくるわけであり、その意味でも、今回の衆院選の真の争点としての緊縮・新自由主義対積極財政・脱新自由主義が重要性を帯びてくるのである。

 今回の選挙、「体制選択」選挙にはならないとしても、今後の政治の方向性に大きな影響を与える選挙である。既に述べたとおり、世界的な潮流は、国の役割は重要であるとの認識の下、積極財政・脱新自由主義である。

 日本ではあまり報道されなかったようであるが、海外のメディアでは「Big Government」という言葉が躍るようになってきた。こうした実情をしっかりと踏まえ、真の争点を念頭において、良識を持った投票行動、政治選択が行われることが期待される。