興奮なき衆院選の真の争点、「緊縮財政・新自由主義」vs「積極財政・脱新自由主義」写真はイメージです Photo:PIXTA

今回の選挙、あまり盛り上がっていないようにも見受けられるが、そもそも争点は何なのだろうか。それは、緊縮財政を続けるのか積極財政に大きく転換するのか、新自由主義政策を続けるのか新自由主義から脱するのか、である。(政策コンサルタント 室伏謙一)

与党議席数減の予測があるものの状況は混沌

 衆議院議員選挙も終盤を迎え、各候補とも最後の訴えに余念がない。今回の選挙、自民党が議席を大幅に減らすとの予測がある一方、野党側も、立憲民主、共産、社民およびれいわ新選組による野党共闘が成立したものの、そこまで伸びないのではないかとの予測もあり、状況は混沌としていると言っていいだろう。

 さて、今回の選挙、思ったほど盛り上がっていないようであるが、そもそも争点は何なのか。新型コロナ対策、経済対策、多様性……さまざまな言葉が浮かんでくるだろうし、実際各候補は各者各様の内容で街頭演説を行い、政策ビラを作製・配布している。選挙の際に必ず各メディアで行われる討論番組でも、新型コロナの影響もあって、論点はこれまでより多岐にわたっているようであるし、強調する政策分野も各党それぞれである。

 加えて、メディアの日常的な報道の内容は、政策の中身よりどの党が優勢・劣勢なのか、どの候補、それも閣僚や大物と言われる候補の状況はどうなのかといったことに偏りがちである。そうしたことから、今回の選挙はこれという争点が見えにくい選挙であるとも言えよう。

 一方で有権者の方はと言えば、そうしたメディアの報道姿勢も手伝ってか、多くの有権者は、選挙を政策ベースではなく、さもスポーツ観戦のように候補者や政党ベースで見る傾向があるように思われる。もちろん政策ベースで選挙そのものを考える有権者もいるだろうが、日本という国全体からの視点で考えるというより、自分にとって身近な政策、興味のある政策を軸に考えるというのが多いのではないだろうか。

 今回の選挙に関して具体的に言えば、新型コロナによってわが国の社会経済が大打撃を受け、失業や倒産・廃業で窮地に立たされている国民も多い状況で、その救済策という観点から選挙に関心を持ち、これを見ているという有権者がその代表例と言ってもいいだろう。

 また、新型コロナへの恐怖心がいまだ蔓延(まんえん)していることもあり、新型コロナ対策の充実・強化を軸に選挙を見ている有権者も少なくないだろう。