(1)国民健康保険料の減免

 新型コロナウイルス感染症の影響によって、収入が急激に減少した国民健康保険加入世帯が、保険料の減免が受けられる特例だ。対象になるのは、(A)新型コロナウイルス感染症に罹患して、主たる生計維持者が死亡、または重篤な傷病を負った場合、(B)新型コロナウイルス感染症の影響で、主たる生計維持者の収入が一定程度減少する見込みの場合。

 保険料の減免額は、(A)が全額免除。(B)は、前年の所得に応じて20~100%の減免が受けられる(前年の所得が0円の場合は対象外)。

 この減免制度のほかにも、新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少し、一時的に保険料を納付できない人のために、納付猶予制度を設けている自治体もある。

(2)国民健康保険の傷病手当金

 新型コロナウイルス感染症は、国の新型インフルエンザ等感染症(20年2月に指定感染症から変更)に指定されているため、治療にかかる費用は国や自治体が負担してくれる。これとは別に、療養中の生活費をカバーするために、今回は国民健康保険に加入する被用者に対して、特例的に傷病手当金が支払われている。

 傷病手当金は、病気やケガをして仕事を休んだときに、健康保険から給付される所得保障だ。被用者保険(企業や団体に雇用されている労働者のための健康保険)の傷病手当金は法定給付なので、会社員や公務員は誰でも給付を受けられる。一方、国民健康保険では傷病手当金は任意給付という位置づけで、原則的に都道府県単位の国民健康保険で給付を行っているところはない。

 ただし、今回は、国が財政支援をすることで、特例的に国民健康保険からも傷病手当金が給付されることになった。対象者は、国民健康保険に加入するパートやアルバイトなど非正規雇用の短時間労働者で、新型コロナウイルス感染症に罹患(りかん)して、仕事を休まざるを得なくなった人だ(自営業者や農林水産業者、フリーランスの人は対象になっていないが、こちらは持続化給付金や時短要請協力金など、その他の給付金や助成などでカバーできるようになっていた)。

 1日当たりの支給額は、直近の連続した3カ月間の給与の合計を出勤日数で割った金額の3分の2。新型コロナウイルスに感染して、働けなくなった日から3日経過し、4日目から療養のために休業している日数分、最長1年6カ月間支給される。支給要件は、「労務不能の状態」なので、入院や通院をしていなくても、自宅療養でも対象になる。

(3)国民健康保険被保険者資格証明書

 資格証明書は、国民健康保険料を1年以上滞納している世帯に対して、被保険者証(健康保険証)の代わりに発行されるもので、病院や診療所の窓口では医療費の全額(10割)が請求される。受診後、患者自身が市区町村の国民健康保険課に出向いて還付請求すると、本来の自己負担分(70歳未満の場合は3割)を除いたお金が給付されることになっている(1年半以上の保険料滞納者は、患者が医療機関に支払った医療費から滞納分の保険料を差し引いたものが払い戻されることもある)。だが、資格証明書が発行されているのは、生活に困窮している世帯がほとんどだ。医療費の全額を支払うことなどできるはずもなく、実質的な無保険状態となっている。

 今回は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために、感染疑いの人が発熱外来などを受診した場合は、資格証明書の提示でも、3割負担(70歳未満の場合)で医療を受けられる措置が取られた。