22年10月に社会保険の適用が拡大されても
網の目からこぼれる60万人が存在する

 現在、短時間労働者(週の労働時間が20時間以上、賃金月額8万8000円以上などの要件を満たした人)に社会保険が適用されるのは、従業員数501人以上の企業だ。これが、22年10月には従業員数101人以上、24年10月には従業員数51人以上の企業にも拡大されることになっている。

 厚生労働省の試算では、これらの見直しで新たに65万人が被用者保険に加入することになるが、それでも社会保険が適用されない被用者が60万人発生する。このなかには、年金収入のある高齢者、夫に扶養されている妻などもいるが、一家の大黒柱として子どもを育てているひとり親も含まれている。彼らこそが貧困問題の中心で、社会保険で救わなければならない存在だ。

 今後、コロナ禍が終息し、雇用情勢が改善しても、雇用形態による賃金格差や社会保険の給付格差を改善しなければ、今回、表面化した貧困を根本的に解決することは難しい。生活するだけで精いっぱいの賃金ではなく、ある程度の蓄えができる賃金を約束し、万一の時には誰もが社会保険から給付を受けられる。そうした社会に転換していかないかぎり、不測の事態が起こるたびに困窮する人を作り出す、脆弱(ぜいじゃく)な社会のままである。

 コロナ禍は、すでに社会にあった潜在的な貧困問題を浮き上がらせた。貧困世帯への各種政策・制度を総動員した特例支援を、コロナ禍とともに終息させてよいのだろうか。この機に、改めて貧困世帯への支援のあり方を考え直すべきではないだろうか。

 病気やケガ、大災害などの不測の事態が起きても、貧困に陥る人を減らしていくためには、社会保険の適用をさらに拡大していくのが筋ではある。だが、どうしても社会保険の網の目からこぼれてしまう人がいる。それならば、コロナ禍で始まった国民健康保険料の減免、傷病手当金の給付などの特例措置を、国が予算を付けて恒久的な給付にしていくといった大胆な支援策も必要ではないだろうか。