職人気質の日本人は良いものが売れると考えるが、それはあくまで限られたマーケットでの話であり、世界を視野に入れた販売戦略はもっと海外のニーズに歩み寄った商品展開が必要になる。ラベルを海外のデザイナーに委託するなどの細かい気配りが訴求力を高めるわけだ。

 日本酒は基本が一升瓶という形を長く守ってきた。しかしこの日本酒のサイズが一般消費者のニーズとすでに乖離(かいり)している。ただでさえ飲まなくなった日本酒は一升瓶単位ではとても家庭では飲まれない。

 そこで注目されているのが1合入りの缶。バリエーションも多く、簡単に飲み比べもできるので人気が急増している。特に家庭では買うときや捨てる際の軽さも重要で、これまでのカップ酒よりも一般家庭に訴求性が高い。

 発酵食品の一種でもある日本酒には、抗ウイルス作用があるとの研究もあり、特にコロナに対しては日本酒などに含まれるアミノ酸「5-アミノレブリン酸」が増殖を抑制するとの研究もある(長崎大学・北潔教授らの研究による。論文“5-amino levulinic acid inhibits SARS-CoV-2 infection in vitro”)。

 歴史ある優れた酒造文化を絶やすことは、食文化の大きな損失である。ワインもジンも結構だが、この年末、寒い夜には熱燗で一杯という日本らしい酒との付き合い方をもう一度見直してみてはいかがだろうか。

(サイエンスライター 川口友万)