――オンラインナースとは?

福田 来院時の最初のカウンセリングを、遠方に在住する優秀な看護師がオンラインで行うものです。とてもコミュニケーション能力が高いので、じっくりと話を聞き出してくれるのです。

 問診した内容は電子カルテに記入され、医師はもちろん、看護師や理学療法士などすべてのスタッフ間で、即時に共有します。すると診察前に行う検査中も、ゲストと検査スタッフが問診を基に会話ができます。医師が検査結果を踏まえて診療する頃には、ゲストはかなり自分の状態を伝えられています。だから、不満が募らないし、医師は短時間で的確な処置ができるわけです。

――皆にメリットのある仕組みですね。

福田 当院のもう一つの特色は、土曜日と日曜日に診療と手術をしていることです。例えば、膝の人工関節手術は大がかりなので、家族にも手術の話を聞いてもらうのですが、どの病院でも、手術を含めて平日に4回ほど付き添う必要があります。多くの場合、「家族に迷惑をかけられない」と諦めるゲストが少なくありませんでした。しかし、当院なら、付き添う家族が仕事を休む必要がないので気兼ねなく手術できます。

――非常に重宝されそうですね。

福田 ただ、すんなり開院とはいきませんでした。手術室や入院施設まで造ると7億円はかかります。しかも前例がない仕組みだったことから、いくつもの金融機関から融資を断られたのです。

 融資に応じてくれたのは東濃信用金庫さんだけでした。感謝しかありません。期待に応えるためにも、何としてもこの取り組みを成功させなければなりません。

ハイエンドな医療サービスを提供する新たな仕組みで、医療の社会課題を解決ハイエンドできめの細かい医療を提供する多治見スマートクリニック
●多治見スマートクリニック 事業内容/クリニック経営(整形外科、消化器・内視鏡内科、内科・糖尿病内科)、従業員数/40人、所在地/岐阜県多治見市住吉町7-27-27、電話/0572-21-1770、URL/smart-clinic.cloud

――今後の展望をお聞かせください。

福田 専門性を持ち、ハイエンドなサービスを提供するスマートクリニックをこの地域に増やしたいと考えています。クリニック同士で電子カルテを共有すれば、どのクリニックに行っても過去の診断が参照できる。症状によって最適なクリニックを紹介すれば、総合病院と同じような安心感を地域にもたらせるわけです。

 さらには日本全国、アジア地域にまでネットワークを広げて質の高い医療を提供すれば、世界中からゲストが集まってくるでしょう。そうなれば、冒頭の社会課題は解決できるはずです。壮大過ぎて、私の代では実現できないかもしれませんが、その口火を切る存在になりたいですね。

(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2021年11月号掲載、協力/東濃信用金庫