――2021年2月に多治見スマートクリニックを開院された経緯とは?
福田 長年、医療の現場が抱え続ける社会課題を解決したいと考えたことがきっかけです。それまで私は、整形外科の専門医として、いくつかの大学病院や医療センターに勤めていました。山中伸弥先生の京都大学iPS細胞研究所に3年間派遣され、再生医療の研究をしていた時期もありますが、キャリアの大半は臨床の現場にいました。
――そこで気付いた社会課題とは?
福田 日本の多くの病院が経営難にあることです。特に総合病院は24時間365日体制を取っているので膨大な固定費がかかる上、例えば「インフルエンザがはやると内科は大忙しだが整形外科や皮膚科はガラガラ」と売り上げのバランスが悪い。医師も看護師も激務で疲弊していますが、金銭的に増員する余裕はありません。これで医療の質を上げるのは無理があります。大がかりな構造改革が必要なのですが、総合病院で改革が実行されることはほぼありません。トップが数年置きに入れ替わることが多いからです。
ハイエンドできめ細かい医療を提供しながら、医療従事者の働き方改革を実現する手はないのか? それなら自分がその仕組みをつくり上げようと考えました。
――なるほど。クリニックの特色は?
福田 整形外科、消化器・内視鏡内科、内科・糖尿病内科の三つの診療科に専門医がおり、手術室や、12床すべて個室の入院設備も備えています。
このリソースとITをフルに活用して、遠隔問診をはじめとしたハイエンドな「医療サービス」を提供し、「ゲスト」としておもてなしする気持ちで患者さまに接する。それがスマートクリニックの特色です。
また、「医療サービスを通じてつながりを届けることで、社会貢献する」というミッションを掲げています。
――「つながり」を具体的にいうと?
福田 二つの意味があります。一つは、治療で元気になり、人とのつながりを取り戻すこと。膝の手術をして外出できるようになるのがわかりやすい例ですね。
もう一つは、当院でつながりを感じてもらうことです。高齢のゲストが、特に悪いところがなくても病院に通うのは、つながりを求めているからです。年を取ると人と会う機会が減るので、医師や受付スタッフとの数分程度のやりとりも、貴重なつながりなんですね。ゲストは「自分の状態をもっと聞いてほしい」と思っています。それに応えるために当院が導入したのが、遠隔問診「オンラインナース」です。