地球温暖化は、新型コロナウイルスより差し迫った問題ではないかもしれないが、パンデミック収束後も長期にわたって取り組まなければならない深刻な課題である。そして実は、デジタル化の流れやAIの利用が、その悪化の一因だとしたら、IT業界はどのように対応すべきなのだろうか。今回は、電気の存在と同じく、それがない時代には戻れなくなったコンピューター環境やネット社会の「不都合な真実」について考えてみる。(テクニカルライター 大谷和利)
近距離旅客機路線の廃止や夜行列車の復活を図るフランス
これは先頃放映されたNHKスペシャル「グレートリセット~脱炭素社会 最前線を追う~」の中で紹介されていたエピソードだが、フランスでは無作為に選ばれた一般市民150人で構成される「気候市民会議」の提案により、同国内の近距離旅客機路線の廃止に向けた動きが加速している。
たとえば、パリからリヨンやボルドーに向かう路線などが該当し、5路線を廃止すれば、年間約11万トンの二酸化炭素を削減できるという。そして、それに代わる移動手段として夜行列車が注目され、スクラップとなる予定だった列車をレストアしての再運行も開始された。その電子チケットには1人当たりの二酸化炭素排出量も記され、同じ距離の移動ではジェット旅客機と比べて約15分の1の排出量で済むとのことである。
また、22カ国70人のさまざまな分野の研究者による二酸化炭素排出量削減対策の効果検証結果も紹介され、そのトップ5は、上から順に(1)冷媒の活用(2)風力発電の利用(3)食料廃棄の削減(4)植物性食品を中心とする食生活の推進(5)熱帯林の保護となっていた。
目を引いたのは、6位の「女児の教育機会」。これは主に途上国において有効な、地球環境問題への関心を高めるための施策と思われる。そして、最も意外だったのは「内燃機関利用の自動車からEVへの転換」で、順位的には26位にとどまっていた。