日本の食品を海外向けにブランディングするために日本貿易振興機構(ジェトロ、JETRO)内に創設された日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)も、現在の日本酒のラベルはそもそもほぼすべてが日本語である上、海外の消費者にとって選択の基準となる記載項目が少なく、なじみのない表現が用いられているため、輸出用の裏ラベルとその表記内容について具体的な提言をしている。

輸出用の「標準的裏ラベル」日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)と国税庁が共同で開発した輸出用「標準的裏ラベル」
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「各国の日本酒インポーターも、いまはまだ飲食店中心なので日本酒のラベル表記についてのニーズは大きくなってはいませんが、今後は海外市場も量販店やECに広がっていったとき、ラベルによるコミュニケーションは不可欠になっていくでしょう。

 ただ、問題は輸出用だけではないんです。日本酒の輸出は、2021年は金額ベースで10%以上となるでしょう。しかし、見方を変えれば90%程度が国内需要によって支えられているということです。そして、海外市場でもインポーターから声がかかるのはまず、国内で選ばれているブランドです。つまり、国内市場で選ばれるようにすることが、すなわち輸出にも大きく寄与する。

 それでみると、海外向けだけでなく、国内の消費者に対しても、今のラベルは不親切すぎます。製造設備の問題とラベルの製造コストの問題と思いますが、多くの日本酒はラベルを1枚しか貼っていませんが、商品情報をきちんと提供していくことが重要です。

 消費者のエボークトセット(Evoked set:想起集合)の中に入っているカテゴリーならまだしも、日本酒の飲用経験者の数は他のカテゴリーと比べて多いわけではありません。商品の選択時に極端に消費者の選択時間を要していると、そもそも選択されない。極めてアナログな手法のようですが、商品自体が購入に至る購入意識決定ファクターを網羅している状態を生む必要があります。

 余談ですが、直近で輸入ワインの調査を行った際も、消費者が商品に関する情報を最も得るのは、ブランドサイトでもSNSの情報でもなく、“商品そのもの”からでした。これは日本酒に対して大きな示唆を与えると思います。パッケージを含めた商品そのものを磨き続けることが極めて重要だと思います」