「日本酒は安過ぎるから粗末に扱われる」黒龍酒造が目指す“価値向上”Photo:kai/PIXTA

徹底した品質管理から高い人気を誇る黒龍酒造の日本酒。今では、日本酒にRFIDタグを導入して、流通経路を管理しているという。安心したルートを辿った日本酒の価値は高いものとなるだろう。「日本酒の価格は安すぎる」と話す黒龍酒造代表の水野直人氏は、日本酒の価値を再考するため、あらゆる活動を実施している。世界で楽しんでもらえる酒の一つになるため、水野氏の考えを聞いた。(ダイヤモンド編集部 深澤 献、編集者 上沼祐樹、フリーライター 藤田佳奈美)

日本酒にRFIDタグを導入
商品一本ごとの流通管理を徹底

 日本酒には適切な温度帯での品質管理が欠かせない。日本酒を美味しく楽しんでもらうことを優先する黒龍酒造では、この課題に長年向き合ってきた。ただ、正規流通品と比べてその管理が不確かな非正規流通品が出回るケースが増えてきた。これでは、職人のこだわりが消費者に伝わらない。

 そこで黒龍酒造では今、日本酒にRFIDタグを導入して対応している。生産の段階から王冠の天面に個品での管理情報を2次元コードにより付加し、RFIDタグを活用して卸売業者や酒販店に届くまでの流通経路を管理。これにより商品一本ごとの流通経路が把握でき、非正規流通品の流通拡大抑止にも繋がるという。

「RFIDに温度ロガーを組み合わせれば温度管理も調べることができますが、まずはこういった流通をトレースすることで抑止になるかと。また、流通の情報そのものにも価値が見出せるかもしれません。自分たちが口にする日本酒がどこを経由してきたか、皆さんが持つ端末で知ることができる時代もそう遠くなさそうです。

 ワインの蔵出しなんかは評価が高いのですよね。信頼できるところから日本酒を購入することが当たり前となれば、日本酒の価値が向上していくことでしょう。残念ながら非正規流通では、品質を下げて高く売られている状況です。これを変えたいのです」

 黒龍酒造では、美味しい日本酒の提供のため、一度、全ての取引先を見直し。その理解と情熱を持ち合わせたところにのみ、日本酒を届けるようにした過去がある。時間のかかる啓蒙活動ではあるが、正しく品質管理された日本酒を届け、日本酒の価値を向上させたいからだ。海外に対しても地道な啓蒙が必要だと考える。