日本でワイン市場が形成される過程において、ワインに関する知識の普及だけでなく、サービス技術の向上や飲食店の衛生面や保管環境の確保などの点で、ソムリエという存在が果たした功績は大きい。また消費者に知識や情報を伝えるメディアとして、ラベルも消費者教育に一役買った。こうした「情報と教育」の仕組みも、日本酒がワインに学ぶべき重要部分だ。(ダイヤモンド編集部 深澤 献、編集者 上沼祐樹、フリーライター 藤田佳奈美)
ワインに関する情報の伝道師
ソムリエが果たした功績
前編で森田真希子氏は、日本酒が世界に向けて市場を形成していく際の重要なキーワードとして「情報と教育」というキーワードを挙げた。
前編で日本のワインブームの変遷を振り返ったが、第1次ブームとされる1970年代でも、日本人のワインに関する知識はまだまだ少なかったようだ。
1973年10月27日号の「週刊ダイヤモンド」に、ワインブームを報じる記事を見つけたが、その中にこんな文章がある。「ワインといえば、一般の消費者にはすぐポートワインなどのおなじみ甘味ぶどう酒が思い出される。ワインがポートワインとは違う、いわゆる生ぶどう酒で、栓を開けたら飲みきってしまうものと一般に理解され始めたのは、ごく最近である。あちらはぶどう酒、こちらがワインなどという使い分けもあるほどである」。また、「ワインをしばしば飲む家庭はまだ3%」との記述もある。
その後、78年頃の第2次ブーム、82年頃の第3次ブームと続いたが、ワインが日本人の生活にしっかりと定着するのは、80年代に入ってからといえる。
その過程において、ワインに関する知識の普及だけでなく、サービス技術の向上や飲食店の衛生面や保管環境の確保などの点で、ソムリエという存在が果たした功績は大きいと森田氏は指摘する。