中田英寿氏は、日本酒の生産者と消費者をつなぐためには「適切な情報の提供」「きちんとした品質の担保」「良い物を確実に買える仕組み」の三つが不可欠だと語る。そして、その仕組みを構築するために、同じ醸造酒であり、世界に市場を広げるワインがたどってきた歴史を学ぶべきである、と指摘する。何より中田氏自身が、自分が経営するJAPAN CRAFT SAKE COMPANYで、ワインに倣った仕組みづくりに取り組んでいる。その全貌を語る。(ダイヤモンド編集部 深澤 献、編集者 上沼祐樹、フリーライター 藤田佳奈美)
情報提供、品質の担保
確実に買える仕組み
「生産者にとって、『消費者に喜んでもらいたい』という思いは共通です。日本酒であれば、蔵元は丹精込めて造った1本を最高の状態で届け、おいしく飲んでもらいたいと心から願っています」
中田氏はそう語る。全国の伝統産業と呼ばれる生産者を訪ね、会話する中で実感した、紛れもない事実だ。
前述したように中田氏は、そんな生産者と消費者をつなぐために不可欠と考えるポイントとして「適切な情報の提供」「きちんとした品質の担保」「良い物を確実に買える仕組み」の三つを挙げる。そして、その仕組みを構築するために、前例であるワインのたどってきた歴史を学ぶべきである、と指摘する。
なにより中田氏自身が、自分が経営するJAPAN CRAFT SAKE COMPANYで、ワインに倣った仕組み作りに取り組んでいる。
まず、「適切な情報の提供」については、日本酒ソムリエアプリ「Sakenomy(サケノミー)」の開発と運営を行っている。
アプリには、全国1300軒以上の酒蔵や、数万を超える日本酒情報が格納されていて、日本酒を文字で検索することはもちろん、ラベルをスキャンすることで、お酒や酒蔵の詳細情報が分かるだけでなく、酒蔵直伝のお勧めの飲み方(温度や酒器)や食事とのペアリング、また、旅で使える各県の蔵元お薦めの宿や飲食店などが分かる。