40年前と比べて国内消費量は約1/3となりつつある日本酒に対し、ワインは40年間で10倍以上の市場規模となった。そもそもワインは、世界のスタンダードな醸造酒でもある。いかにしてワインはその地位を得たのか。その歴史を知ることで、「SAKE」が世界市場に羽ばたくヒントを得られるのではないか――。特集『SAKEとワインの新常識』では、12月13日(月)から12月24日(金)までの全12回連載で、さまざまな立場から日本酒やワインに携わる“プロ”たちが、日本酒の未来を切り開く方法論を語る。
#1 12月13日(月)配信
中田英寿氏の挑戦「日本酒の未来を考えたらワインに行き着いた」
日本酒が世界の「SAKE」としての地位を築くカギは、ワインの来し方を振り返ることにあるのではないか――。自らもSAKEビジネスに関わる中田英寿氏はそう問題提起する。ワインが世界で受け入れられたのは決してその味わいだけが理由ではない。歴史上のある時期にワインが急に美味しくなったからではなく、ワインを取り巻くさまざまな人々の取り組みがあり、それらが仕組みとなって広がって今のマーケットが作られた。ここが、中田氏が喝破する、最も学ぶべきポイントだ。
#2 12月14日(火)配信
中田英寿氏が日本酒業界に持ち込んだ「イノベーション」の中身
中田英寿氏は、日本酒の生産者と消費者をつなぐためには「適切な情報の提供」「きちんとした品質の担保」「良い物を確実に買える仕組み」の三つが不可欠だと語る。そして、その仕組みを構築するために、同じ醸造酒であり、世界に市場を広げるワインがたどってきた歴史を学ぶべきである、と指摘する。何より中田氏自身が、自分が経営するJAPAN CRAFT SAKE COMPANYで、ワインに倣った仕組みづくりに取り組んでいる。その全貌を語る。
#3 12月15日(水)配信
日本酒とワインで違う「テロワール」…原料や土壌より地域の食文化が影響
日本酒の立ち位置と可能性について、前・酒類総合研究所理事長の後藤奈美氏に聞いた。日本酒の歴史には数々の浮き沈みがあったが、日本酒史に最も影響を及ぼしたタイミングは、江戸時代や明治以降の技術開発と、戦中・戦後の2つの時代にあったと語る。さらに、そこから食事との相性の科学や、日本酒におけるテロワールについて話が広がっていく。
#4 12月16日(木)配信
日本酒はカッコいい? 若い世代が持つイメージと海外での評価
日本酒は、戦後、食糧事情の改善や、高度経済成長もあり、その生産量と消費量が一気に増加した。しかしその後、ウイスキー、焼酎、ワインなど酒のトレンドが移り変わる中で、日本酒はたちまち減少傾向に向かった。一方で海外での人気は高まっているが、日本酒は今後、どんなポジションを目指すべきなのだろうか。前・酒類総合研究所理事長の後藤奈美氏と考える。
#5 12月17日(金)配信
法改正で輸出用日本酒に好機?高付加価値・少量生産が可能に
酒と法律の切っても切れない関係について、元・国税庁酒類担当審議官の刀禰俊哉氏に聞く。 日本酒には最低製造数量基準があり、年間60キロリットルと設定が高かった。一方で、海外での日本酒ブームも相まって、2020年度の税制改正において、「輸出向け」に限り、清酒製造免許の新規発行が許可されるようになったが……。
#6 12月18日(土)配信
日本酒のラベルが「ワイン化」する?表示ルール作りで議論沸騰中
国内外の消費者にとって、今の日本酒のラベルは、味わいや“ストーリー”を伝える分かりやすいツールになっているだろうか。元・国税庁酒類担当審議官の刀禰俊哉氏に聞く。日本酒がよりグローバルな存在となり、名実ともに世界の「SAKE」となるために、ラベルの表示ルールの整備は、生産者から消費者までみんなで考えていくべき課題だ。
#7 12月19日(日)配信
原点はサントリー「赤玉」、ワインが日本人の生活に定着した道のり
ワインはいかにして国内外で市場を広げてきたのか。世界の酒について詳しい食品産業新聞社の記者、森田真希子氏に聞いた。日本人にとっての原点は、1907年に発売されたサントリーの「赤玉ポートワイン」。そこから何度かの“ワインブーム”を経て今に至る。そして、ワイン市場の伸長は日本経済や為替の動向と密接に関係していることがわかる。
#8 12月20日(月)配信
ソムリエ、ラベル、ネーミング…ワイン市場を広げた「情報と教育」の効果
日本でワイン市場が形成される過程において、ワインに関する知識の普及だけでなく、サービス技術の向上や飲食店の衛生面や保管環境の確保などの点で、ソムリエという存在が果たした功績は大きいと食品産業新聞社の森田真希子記者は指摘する。また消費者に知識や情報を伝えるメディアとして、ラベルも消費者教育に一役買った。こうした「情報と教育」の仕組みも、日本酒がワインに学ぶべき部分だ。
#9 12月21日(火)配信
輸入ワイン売上1位「アルパカ」はなぜ量販店で“自動的”に売れるのか
長い歴史の中で、日本酒が消費者からの支持を失い続け、逆にワインは獲得し続けた。その理由は何か。Sake Experience Japanの代表を務める井谷健氏は、ワインの生産者とインポーターは、消費者の嗜好性に対し、味わいの面でもパッケージの点も真剣に向き合ってきたことを挙げる。日本酒の関係者にはそうした視点と努力が欠けていたのかもしれない。
#10 12月22日(水)配信
「詳しい人しか飲んではいけない酒」から日本酒が脱する法
Sake Experience Japanの井谷健代表は、日本酒が一定程度の知識を持った消費者でないと売り場で商品を選択できない状態になっていることを憂う。ワインのマーケティング関係者が長年取り組んできたように、ラベルや販促物を通じて、本当に消費者が求めている情報を適切に提供していかなければならない。
#11 12月23日(木)配信
黒龍酒造が売上減もいとわず「品質管理」を優先した理由
日本を飛び出して、世界でも楽しまれるようになった日本酒だが、品質管理が行き届いていないと、その隆盛も長くは続かない。早くから品質管理の重要性に気づき、徹底的にこだわったのが、黒龍酒造代表の水野直人氏だ。取引先をすべて見直し、再構築した。売り上げは大きく減ったが日本酒の品質を優先したのだ。その思いを聞いた。
#12 12月24日(金)配信
「日本酒は安過ぎるから粗末に扱われる」黒龍酒造が目指す“価値向上”
「日本酒の価格は安すぎる」と話す黒龍酒造代表の水野直人氏。日本酒の価値を再考するため、あらゆる挑戦を行っている。例えばRFIDタグを導入した徹底した品質管理などだ。「安すぎるから粗末に扱われる」と話す水野代表の、日本酒の価値を向上させる取り組みのひとつが、ワインのような「熟成」という評価軸の打ち出しだという。
Key Visual by Ken Fukasawa