日本酒のラベルが「ワイン化」する?表示ルール作りで議論沸騰中Photo:taa/PIXTA

国内外の消費者にとって、今の日本酒のラベルは、味わいや“ストーリー”を伝える分かりやすいツールになっているだろうか。日本酒がよりグローバルな存在となり、名実ともに世界の「SAKE」となるために、ラベルの表示ルールの整備は、生産者から消費者までみんなで考えていくべき課題だ。(ダイヤモンド編集部 深澤 献、編集者 上沼祐樹、フリーライター 藤田佳奈美)

複雑な日本酒のラベル表示
法律ではどう決まっているか

 多くの日本人が日々、楽しんでいる日本酒ではあるが、表示ルールについて考えたことはあるだろうか。ラベルに表示される「吟醸」「純米」の文字、これはお米の精米歩合や原料といった条件を満たした「特定名称酒」の呼称となっており、主に「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」があり、さらに原料や製造方法の違いによって8種類の日本酒に分類されている。お気に入りのお酒を見つけた時に、銘柄と特定名称について覚えておくとよいといわれるが、この特定名称については、さまざまな考え方があるようだ。

「日本全国、さらに世界に向かって前向きに日本酒を発信しようとしている酒蔵ほど、特定名称についてさまざまな考え方を持っておられるように思います。特定名称を名乗ることのできるお酒にもかかわらず、あえて名乗らなかったり、精米歩合を記載しない蔵もあり、お酒の分類に伴う情報ではなく“味”を堪能してもらいたい、という思いがあります。特定名称を名乗らないことによって、これらの情報を掲載しない自由もあるのです」

 ここで日本酒の表示ルールを整理すると、大きくは二つの法律を根拠としている。まず、酒類業組合法では、酒税の保全のため、酒類の品目等所定の事項を表示することが義務付けられている。もう一つは、食品表示法で、食品としての安全性の確保や食品の選択機会の確保のため、添加物などの表示についてのルールが定められている。また、酒類の取引の円滑な運行 や消費者の利益に資するため、「清酒の製法品質表示基準」が国税庁によって定められていて、ここでは、特定名称の表示の要件などが規定されており、その中で必要記載事項、任意記載事項、表示禁止事項が規定されている。