日本の低成長の背景にある人口減少と少子化。政府は生産性向上や社会保障の削減に取り組んできたものの、賃金抑制と将来不安の悪循環に陥っている。子どもへの投資は将来の成長を支える「最強の成長戦略」と位置付け、パラダイムの転換を唱える野田聖子少子化担当相は、「GDPの3%」を子ども政策に充てるよう提唱する。『ポストコロナの新世界』#12では「こどもまんなか」政策を掲げる野田氏に、「こども庁」創設の狙いを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)
毎年「鳥取県と同じ人口」が消える日本
人口減少は最大の国難だ
――「人口減少への対応が日本の最重要課題だ」と自民党総裁選で訴え、岸田文雄政権下では少子化対策担当相です。総裁選への出馬はどんな思いがあったのですか。
人口減少は最大の国難で、日本の近未来の全ての困難に関わる問題です。
多くの人には実感しにくいかもしれませんが、日本では2020年の1年間で約54万人、つまり毎年、鳥取県と同じ人口が消えています。このまま進行すると国民の生活が脅かされるのです。
労働人口が減れば経済の競争力が落ち、消費も伸びず経済成長も難しくなる。そうすれば税収も減り、行政サービスの縮小や社会保障の負担が増えることになります。
安全保障にも影響が出ます。自衛隊や海上保安庁、警察、消防などの、国民の生命や財産を守り、国の安全保障を担う組織のマンパワーが減っていきます。実際、自衛隊は定員割れが続いていますし、採用年齢引き上げなどに取り組んでいます。経済成長や安全保障を脅かすという、人口減少問題の重要性はもっと認識される必要があります。