ポストコロナの新世界「こどもまんなか」Photo:Bulgac, _human, egal/gettyimages

日本の低成長の背景にある人口減少と少子化。政府は生産性向上や社会保障の削減に取り組んできたものの、賃金抑制と将来不安の悪循環に陥っている。子どもへの投資は将来の成長を支える「最強の成長戦略」と位置付け、パラダイムの転換を唱える野田聖子少子化担当相は、「GDPの3%」を子ども政策に充てるよう提唱する。『ポストコロナの新世界』#12では「こどもまんなか」政策を掲げる野田氏に、「こども庁」創設の狙いを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)

毎年「鳥取県と同じ人口」が消える日本
人口減少は最大の国難だ

――「人口減少への対応が日本の最重要課題だ」と自民党総裁選で訴え、岸田文雄政権下では少子化対策担当相です。総裁選への出馬はどんな思いがあったのですか。

野田聖子氏が明かす“こども庁”構想の全貌「子ども政策にGDPの3%を」のだ・せいこ/1960年生まれ、岐阜県議を経て93年衆院初当選、現在10期目。98年、小渕政権で当時、閣僚史上最年少で郵政相に抜擢された。郵政民営化問題で一時、自民党を離れたがその後、復党。福田・麻生内閣で消費者・食品安全・科学技術政策担当相、第3次安倍第3次改造内閣で総務相、第4次安倍内閣で総務相、男女共同参画担当相を歴任。21年10月発足の岸田内閣で少子化対策・地方創生・男女共同参画担当相。私生活でも自ら体外受精や事実婚、障害児の母親として、人口問題だけでなく女性活躍や多様性社会の推進などに取り組んでいる。 Photo by Masato Kato

 人口減少は最大の国難で、日本の近未来の全ての困難に関わる問題です。

 多くの人には実感しにくいかもしれませんが、日本では2020年の1年間で約54万人、つまり毎年、鳥取県と同じ人口が消えています。このまま進行すると国民の生活が脅かされるのです。

 労働人口が減れば経済の競争力が落ち、消費も伸びず経済成長も難しくなる。そうすれば税収も減り、行政サービスの縮小や社会保障の負担が増えることになります。

 安全保障にも影響が出ます。自衛隊や海上保安庁、警察、消防などの、国民の生命や財産を守り、国の安全保障を担う組織のマンパワーが減っていきます。実際、自衛隊は定員割れが続いていますし、採用年齢引き上げなどに取り組んでいます。経済成長や安全保障を脅かすという、人口減少問題の重要性はもっと認識される必要があります。