団塊ジュニア世代の
アップデートの遅れ

 稲田氏の指摘は、今風の言葉で言えば「アップデートできてない」ということに尽きる。炎上してしまうおじさんたちの多くは40代~50代であるが、世代としての特徴もアップデートが遅れる一因を形成しているという。

「40代~50代の団塊ジュニアは、その親世代(団塊世代)と並んで、もっとも人口の多い世代です。彼らは今までの人生のどの時点でも最多数派でした。だから、自分の考えは無条件に世間の圧倒的共感を得られるという思い込みが、僕も含めてある。自分の露悪的な部分を吐露しても、感性を同じくする同胞が必ず支持してくれると思い込んでしまうんです」

 炎上の現場になるのは主にSNSなどのネット空間だが、そこでも意識の齟齬(そご)が発生している。

「中高年が発信する場は主にSNSなどのネットメディアですが、その内容をどう受け止め、どう評価し、どういうニュアンスで拡散するかを決めるのは、彼らではなく彼らより下の世代です。SNSを使いこなし、拡散力を持っているのは10代~20代なので、ネット上では彼らの方が影響力は大きい。リアル空間では同胞たちが面白がってくれた内容でも、ネットで発信すれば『やべえこと言ってるおっさんがいるぞ!』と若者に拡散され、それがネット上の良識として炎上を招く。中高年は、もはや自分たちはネットメディアの中でセンターポジションにいないと意識することが必要だと思います」

 ただ、これまで稲田氏が述べたような意識のズレは、程度の差はあれど“サブカルおじさん”に限らず、どんな世代でも生じる可能性がある。

「例えば、学生運動を経験した世代は『若者はもっと政治に参加しろ』とよく言いますが、彼らの時代は親に学費を出してもらえる経済的余裕があり、就職が数年遅れても生きていける時代でした。今の学生はバイトで学費を稼がないといけないので政治にかまけている暇はありません。こうした時代ごとの意識のズレはどの世代にも生じますし、変化のスピードが速い現代では一層激しくなる。“サブカルおじさん”に限らず『この言動は昔は良かったけど今はダメ』という意識の更新を怠らないことが重要ではないでしょうか」

 多感な時期に経験した価値観を更新しないと、炎上は「明日は我が身」ということを自覚すべきだろう。