『スマホ脳』著者が語る
運動の快感を維持する方法

 運動することで脳の機能が改善になる。同じことをベストセラーになった『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン/久山葉子 新潮社)の作者であるアンデシュ・ハンセン氏も述べている。

 同氏から話を聞いた。

 ハンセン氏によれば、私たちがスマートフォンを片時も離せなくなるのは「期待」のせいだという。

「重要なニュースがアップされるかもしれない」「次のタップで役に立つ情報が手に入るかもしれない」と予測する(=期待する)ことで脳内物質が分泌され、その気持ち良さによって私たちはスマホを手放せなくなるという。これはギャンブル中毒者にも共通する。つまり、スマホを使いながら、私たちはギャンブルを楽しんでいるのだ。

 だから私たちはスマホから逃れられずに無駄な時間を費やしている。そんなスマホに対抗するには、運動することが重要だとハンセン氏は言う。

「運動をした後は気分が良くなります。しかし、誰も運動中毒にはなりません。なぜなら、脳にとって重要なのは生存することであり、そのためにはカロリーを使い切らずに保存する必要があります。そして、私たちには怠慢という特性があり、体を動かしてカロリーを減らすことはできるだけしたくありません」

 とはいえ、狩りをしなければ食べ物を得られない。

 それゆえに「運動をすると脳は気持ち良くなり、もっと運動をしたくなりますが、必要なカロリーが得られれば、その後は怠慢に負けてしまうのです」。

 昔から腹八分目というが、脳にもそれがいえるようだ。腹がいっぱいになれば脳は体を動かそうとしなくなる。だから、怠慢に負けないためには、食べ過ぎないように節制した生活をするべきなのだ。

「私たちの認知機能、記憶力や集中力、創造力は運動による影響を受けています。これは数百の論文が裏付けています。運動はうつ病や不安症のリスクを減らします。しかし、私の母国であるスウェーデンでは若者の歩行量は2000年に比べて25~30%も低下しています。これは心の問題と戦う力が落ちていることを意味します」

 脳のコンディションを整えるには、年齢を問わず、運動が必要だ。

「スウェーデンでの調査によれば、2000年以降、子どもたちの運動量が低下したのはスマートフォンの影響でした。同じことは大人にもいえます。運動は学習力も向上させるので、運動しないことは生活に深刻な影響を与えるでしょう」