企業を選ぶ基準は変化
就職人気にも影響が

 一昨年あたりから、就職希望者が重視する項目に、従来からあった仕事の内容、勤務条件、報酬などに加えて、副業の許容度が加わってきた。それは、単にアルバイトをしたいということではなく、副業の許容度が自由な企業風土であることのバロメーターと見られてきたのである。

 しかしテレワークの許容は、副業を大きく上回る企業選択の新たな項目になる可能性がある。平時においてもテレワークを併用している企業は、先に述べたように職務が明確であり、自分の努力がよりストレートに評価される。上司へのゴマスリや夜の宴会にエネルギーを使う必要が少なくて済むとも見られている。

 さらに、家事や育児、介護などと仕事との両立を考えた場合、テレワークを許容している企業は、そうした課題を抱えた場合でも対応しやすい。どこに住むかという選択肢も、テレワークを実施している企業であれば広がってくる。

 たとえばNTTは、2021年9月、コロナ収束後もテレワークを原則とし、転勤、単身赴任をなくしていく方針を打ち出した。転勤、単身赴任という日本の人事管理において“当然”と思われていた制度にも、メスを入れたのである。同時に、ジョブ型の人事制度の導入も進め、全管理職を対象とすることにした。

 NTTがテレワークを推進する通信の会社である点を割り引いても、日本を代表する伝統的な大企業が、テレワークをベースとした働き方や人事制度のあり方を再構築しようとする試みには、注目したい。

 かつての就職人気ランキングの上位には、大きくて安定性があり、仕事が魅力的で、報酬が良い企業が並んでいたが、ここ数年の間に、平時においてもテレワークができる企業が上位に進出してくると予想される。逆に言えば、事務系ホワイトカラーで、全員職場勤務を強要するような企業は、自律できる優秀な人材が集まらなくなり、遠からずランキングから消えていく運命にあろう。

(早稲田大学ビジネススクール教授 山田英夫)