テレワークを続ける若者のほうが
仕事のモチベーションが高い3つの理由

 在宅勤務の生産性に関する研究は、まだ緒に就いたばかりである。内外で、生産性の向上あるいは低下の様々な結果が出ている。

 森川正之・一橋大学教授の調査(『新型コロナと在宅勤務の生産性:パネルデータ分析』RIETI、Discussion Paper Series,21-J-041,2021)によれば、在宅勤務での生産性が低かった人ほど職場勤務(筆者注:出社ということ)に戻り、今も在宅勤務を続けている人の生産性は1年前に比べて上昇した。すなわち、在宅勤務の“学習効果”は、1年ほどたって出てきたのである。在宅勤務の生産性をどの時点で調査するかによっても、調査結果は違ってくると言えよう。

 筆者は、働きながら夜間のMBAコースに通う学生と接しているが、コロナ感染が落ちついた後もテレワークを続けている社会人の方が、職場勤務に戻された社会人より、総じて仕事へのモチベーションは高いようだ(それは特に外資系企業に多い)。それは何故だろうか。

 第一に、コロナ禍の状況にかかわらずテレワークを継続している企業は、個人のジョブが明確になっている。自分の仕事が明確にアサインされていれば、他人との余計な調整は最小限にすることができる。そのため家で仕事をしていても、仕事の進め方に関する不安は少ない。

 第二に、そうした企業では社員を成果で評価する習慣が根づいている。成果を測るモノサシも共有されており、評価する側の評価能力もある程度訓練されている。成果を正しく評価することは、テレワークを進めていくための必須条件である。

 第三に、「従業員は、職場で見張っていないとサボる」という性悪説に基づいた管理ではなく、どこで働こうが社員を信用して仕事を任せるという、性善説に基づいたマネジメントを会社がしてくれていることに対して、社員は心理的安定性を感じているのではないだろうか。