公平かつ効率的な再分配政策
「良いバラマキ政策」6つの作法とは?

 元々緊縮財政方向にバイアスがある岸田首相は、広く現金を支給するようなバラマキ政策が好きではないのかもしれない。

 しかしバラマキ政策は、正しく行うなら公平かつ効率的な再分配政策であり、「成長と分配の好循環」をもたらすためには不可欠でかつ有効なツールだ。「バラマキ」という言葉の響きに怯まずに、「良いバラマキ政策というものがあるのだ」と胸を張ってほしい。

 では、好ましいバラマキ政策のための原則、いわば「良いバラマキの作法」をまとめてみよう。

 要点を短くまとめると、(1)一律、(2)現金、(3)地域・使途・使用期限の無制限、(4)迅速、(5)低コスト、(6)継続性、の6点だ。

 支給対象はなるべく広く、金額は一律同じにすることが公平で効率的だ。もちろん、配る手段は現金(銀行等の金融口座への振り込み)がいい。そして、所得制限は要らない。

 個々の個人や家計によって事情が違うのではないかといった問題や、お金持ちにもお金を配るのはおかしいといった素朴な批判には、「財源としては適切に税金を取るので公平だ。支給と税金の『差額』で見てほしい」と胸を張って答えるといい。

 例えば、一律10万円の現金支給政策に対して、5万円税負担が増える国民と、15万円税負担が増える国民がそれぞれ半々いると、後者から前者へ5万円が「再分配」される。国民の手元には10万円が支給されているのだから、財源となる税金の追加的負担能力は国全体に必ずある理屈だ。政策全体としては再分配政策であり、「バラマキ政策」はその一部なのだと考えるといい。

 個々の国民の所得や資産の状況に応じて「困り具合に応じた」支給を行うことは、国民の所得や資産のデジタルデータによる把握が完全にできれば十分に対応可能な理屈ではある。しかし、デジタル後進国であるわが国の現状にあっては不可能だ。