日本進出が「お手並み拝見」と見られた理由

 果たして、ネットフリックスは日本市場でどれだけの力を見せることができるのか。保守派にとっては「お手並み拝見」、一部の少数派には「ネットフリックスは脱テレビ依存のカギ」と思われていた。どちらの見方が正しかったのか? 日本市場も世界市場も取材していた筆者には、どちらの見方もある意味では正しいと映っていた。

 まず、「お手並み拝見」のスタンスに同意できたのは「日本市場への外資系参入はハードルが高い」という現実があったからだ。「日本特有の業界体質がネック」と言えば、業界に限らず通じる話だろう。「ガラパゴス」と日本がよく揶揄されるのは、一国で1億人以上の人口を有し、内需で潤い、産業が独自に進化してきた歴史があるからである。メディア業界もまさにそうで、外資系が入り込むにはそれなりの戦略と覚悟がいる。

 ドラマやバラエティ番組を揃えるネットフリックスの最大の競争相手はテレビ局だと当初は根強くそう見られていた。日本に限らず、アメリカでも同じようにネットフリックスとテレビ局との間で対立構造が生み出されていた。日本とアメリカの場合とで明らかに違うのは、ドラマやバラエティ、ドキュメンタリー番組が成立するまでの流れだ。制作の過程が根本的に異なるのである。